会話から即購入へ：ACPとInstant Checkoutで変わるECの常識【2025年最新】

2025.10.02
読了時間目安 3分

新しい種類の店頭とも言える「AIエージェント経由の購入」は“実証段階”を超え、標準化の波（ACP）と実運用（ChatGPTのInstant Checkout）で本格普及フェーズに入ります。EコマースやSaaS、マーケットプレイスにとっては、「発見→検討→購入」を会話内で完結させる新規チャネルを、既存の決済・在庫・税務・不正対策スタックの延長で実装できる環境が整いつつあります。

AIエージェント経由の購入とは何か
Agentic Commerce Protocol（ACP）
なぜ今ACPが必要なのか（事業側の壁を解消）
- 効果（期待値）
まとめ
参考・出典

AIエージェント経由の購入とは何か

AIエージェント経由の購入とは、ChatGPTのような対話型AIを通じて、商品の発見から決済まで完結できる新しい購買体験を指します。

この仕組みの中核を担うのが、Agentic Commerce Protocol（ACP）というオープン標準です。ACPは、”Stripeが提供する公式ブログによれば、「AIエージェントを介した商取引を可能にするために開発された」”ものであり、OpenAIとStripeが共同で設計しました。

具体的には、以下のような流れで購入が完了します。

対話による商品発見: ユーザーがAIに「予算5万円で軽量なノートPCが欲しい」と伝える
AIによる最適提案: AIが要望を理解し、複数の選択肢を提示
即座の購入決定: 気に入った商品をその場（チャット内）で購入
シームレスな決済: 事前登録された決済情報で自動処理

このプロセス全体が、Webサイトを離れることなく、会話の流れの中で完結します。Stripeのニュースリリースによれば、この「Instant Checkout」機能は、”ChatGPT内で直接購入を可能にする”ものとして、すでに実装が進められています。

Agentic Commerce Protocol（ACP）

StripeとOpenAIが共同開発したAgentic Commerce Protocol（ACP）は、買い手・AIエージェント・事業者の間でプログラマティックに商取引を成立させるためのオープン標準です。ChatGPTに実装されたInstant Checkoutでは、米国内のEtsyに加え、順次Shopifyの100万超商流にも拡大予定とされ、会話UI内での決済が現実のコンバージョン・チャネルになりつつあります。2025年9月29日より、米国内のChatGPTユーザーは、米国のEtsy販売者から購入できるようになりました。

なぜ今ACPが必要なのか（事業側の壁を解消）

断片化：各AIプラットフォームがそれぞれ独自の決済システムを構築すれば、開発者は個別対応に膨大なコストを費やすことになります。ACPは、この「断片化の回避」を目的としたオープン標準として設計されました。つまり、一度ACPに対応すれば、ChatGPTだけでなく、将来登場する他のAIエージェントにも同じ仕組みで対応できるのです。これは、開発効率とスケーラビリティの両面で大きなメリットをもたらします。
信頼性：AIエージェントを介した決済では、「本当に正しい相手に支払われるのか」「詐欺のリスクはないのか」という根本的な不安が存在します。ACPは、Stripeの既存の決済インフラを活用することで、この信頼性を担保しています。
“Stripeの公式ブログでは、「信頼性の確保」が主要な利点として強調”されており、従来のEC決済と同等以上のセキュリティレベルが実現されています。

拡張性：標準化は重要ですが、画一的すぎるシステムでは、ブランド独自の購買体験を提供できません。”ACPの利点として「柔軟性の提供」が明記”されているように、企業ごとのカスタマイズニーズにも対応できる設計思想が採用されています。

効果（期待値）

CVR向上：発見から購入まで遷移ゼロのため離脱が低減。
新規獲得：AI内検索/レコメンデーションからの高意図トラフィックを刈り取る。
運用効率：既存のシステムや事務処理（PSP/会計/税務/フルフィルメント）をそのまま使用できる。
将来適応：複数エージェント台頭時でも“一回のACP実装”で横展開できる。

まとめ

StripeとOpenAIが共同開発したAgentic Commerce Protocolにより、その実現に必要な技術的基盤が整いつつあります。AIエージェント経由の購入は、標準（ACP）×実装（Instant Checkout）が同時に動き始めました。
このプロトコルは、信頼性、標準化、柔軟性という3つの柱によって、AI主導のコマースが直面する課題を解決します。そして、それによってもたらされるのは、消費者にとってより便利で、事業者にとってより効率的な、まったく新しい商取引の形です。