デジタル証券(セキュリティトークン)完全ガイド|日本市場の最新動向2025

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デジタル証券(セキュリティトークン:ST)は、ブロックチェーン上で発行・管理される「デジタル化された証券」です。日本では不動産や社債などのアセットを対象に、公募案件・個人向け販売・二次流通まで実装が進み、2025年時点で“実用フェーズ”に入っています。
結論から言えば、2025年の日本ST市場は①商品ラインアップの拡大(不動産・社債)、②販売チャネルの一般投資家向け拡充、③二次流通・決済インフラの高度化(DvP×ステーブルコイン)が同時進行で進展しています。

デジタル証券とは何か

デジタル証券(セキュリティトークン)は、ブロックチェーン技術を用いて電子的に発行される有価証券です。2020年5月施行の改正金融商品取引法により「電子記録移転有価証券表示権利等」と規定され、金融機関による取り扱いが可能になりました。

従来の有価証券とは異なり、証券保管振替機構ではなく、ブロックチェーン上で取引履歴や残高が記録されます。この仕組みにより、データの改ざんが極めて困難になり、複数の参加者による共同管理でシステム全体の安定性も向上しています。

デジタル証券の3つの特徴

  1. 小口化による投資機会の拡大:これまで投資機会が限られていた様々な資産へ、比較的少額から投資することが可能になります。10万円程度から不動産などの実物資産に投資できるケースもあり、個人投資家の参入障壁が大きく下がっています。
  2. 金銭以外のリターンも可能:配当や分配金に加えて、発行体が提供するポイントやクーポンなど、金銭以外の形でリターンを受け取ることも可能です。
  3. 取引の透明性と効率性:ブロックチェーンの特性により、取引履歴が透明に記録され、決済時間も短縮されます。スマートコントラクトを活用することで、発行・管理プロセスも効率化されています。

急成長する日本のデジタル証券市場

国内の公募セキュリティトークン市場は、2025年7月末時点で累計発行金額が1,938億円を上回る規模まで成長しています。市場の中心は不動産セキュリティトークンですが、今後は税制改正により動産を裏付けとした証券の発行も加速する見込みです。

二次流通市場の本格稼働

大阪デジタルエクスチェンジが2023年12月に開設したセキュリティトークンの二次流通市場「START」が本格的に稼働し、不動産セキュリティトークンの取引が行われています。今後はセキュリティトークン社債の新規取り扱いなどによる市場規模の拡大が期待されています。

Project Trinity:ステーブルコイン×DvP決済の実証プロジェクト

2025年8月22日、日本のデジタル証券市場に新たな動きがありました。三井住友銀行、大和証券、SBI証券など主要金融機関8社が参加する実証プロジェクト「Project Trinity」が正式にスタートしたのです。

現在の課題とプロジェクトの目的

現在の二次流通市場では、セキュリティトークンと資金の交換が同時に行われないため、カウンターパーティ信用リスク(取引相手が約定を履行しないリスク)が存在しています。
このプロジェクトは、ステーブルコインを活用したDvP(Delivery Versus Payment)決済を実現し、決済効率化とカウンターパーティ信用リスクの構造的な排除を目指しています。

DvP決済とは

DvP決済とは、証券の引渡しと代金の支払いを同時に行う決済方式です。ブロックチェーン上のスマートコントラクトを利用することで、取引が成立した瞬間に自動的に決済が実行される仕組みを構築でき、効率性が飛躍的に向上します。

プロジェクトの将来像

このプロジェクトは3つのフェーズで推進されます。短期的には「証券会社間におけるステーブルコインを活用したT+2のDvP決済」を目指し、将来的には日中の個別売買取引に対する約定後即時グロス決済によるDvP決済を実現し、24時間365日の取引も期待できます。

大和証券とSBI証券は、実際に発行されたセキュリティトークンの売買取引を、三井住友銀行が発行するステーブルコインでDvP決済する業務運用検証を行います。プロジェクトを通じて得られた検証結果は、市場関係者とも共有され、実際の業務への適用が検討される予定です。

ステーブルコインが鍵を握る理由

ステーブルコインとは、価格が法定通貨と連動するように設計されたブロックチェーン上のデジタル通貨で、2023年6月の資金決済法改正により「電子決済手段」として法的な位置付けが明確になりました。

ステーブルコインを使うことで、セキュリティトークンの決済をブロックチェーン上で完結することが可能になり、即時決済と取引コストの削減が期待されます。また、デジタルアセットと掛け合わせることで、キャッシュマネジメントにおける効率化の幅が広がります。

今後の展望と課題

現在、国内のステーブルコイン関連の多くの取り組みはPoC(概念実証)段階にとどまっており、商用化・収益化に至った事例の創出はこれからです。収益性のあるユースケースの創出と、モニタリング体制の整備が普及のカギとなります。

不動産STOの仕組みを活用することで、機関投資家のみにアクセスが限られていた高額で流動性の低い不動産などの資産を小口化し、個人投資家も直接投資することが可能になります。
法整備の進展、二次流通市場の整備、金融リテラシーの向上により、デジタル証券を通じた資産形成が今後さらに広がっていくことが期待されます。

デジタル証券は、投資の民主化と金融市場の効率化を同時に実現する可能性を秘めています。Project Trinityのような実証プロジェクトを通じて技術的・制度的な課題が解決されれば、日本の金融市場は新たなステージへと進化していくでしょう。


参考・出典

本記事は、以下の資料を基に作成しました。


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