【2025年最新版】あなたの顔や手が決済手段に？生体認証決済の全貌

2025.09.03
読了時間目安 5分

買い物のレジで財布を探したり、クレジットカードのパスワードを思い出せずに困った経験はありませんか？そんな悩みを解決する画期的な技術として、生体認証決済が急速に普及しています。2029年までに約184億ドル規模に成長すると予測される生体認証カード市場は、私たちの決済体験を根本から変えようとしています。

なぜ今、生体認証決済が注目されているのか
実際の導入事例から見る生体認証の可能性
生体認証技術の種類と特徴
導入企業が得られる具体的なメリット
普及に向けた課題と解決策
今後の展望：2025年以降の生体認証決済
まとめ：生体認証決済がもたらす新しい決済体験
参考・出典

なぜ今、生体認証決済が注目されているのか

生体認証決済が注目される最大の理由は、「安全性」と「利便性」の両立にあります。従来の決済方法では、カードの紛失や盗難、パスワードの忘却といったリスクが常につきまとっていました。しかし、指紋や顔、手のひらといった身体的特徴は、その人だけが持つ唯一無二の「鍵」です。複製や盗難が極めて困難であることから、なりすましによる不正利用を大幅に削減できます。

日立製作所が開発した生体認証基盤「PBI（Public Biometrics Infrastructure）」では、生体情報を暗号化して保管する革新的な仕組みを採用しています。取得した生体情報をそのまま保存するのではなく、復元不可能な形に変換することで、万が一システムがハッキングされても元の生体情報が流出しないよう設計されているのです。

さらに、2020年のパンデミックを機に非接触決済へのニーズが急速に高まりました。衛生面への意識が高まる中、物理的な接触を最小限に抑えられる生体認証決済は、時代のニーズにぴったりマッチしたのです。

実際の導入事例から見る生体認証の可能性

「SAKULaLa」の革新的な取り組み

国内の一部スーパーマーケットや飲食店では、レジに「SAKULaLa」を導入することで、スムーズな買い物体験を実現しています。具体的には、セルフレジでの顔認証による本人確認で、クレジットカード決済やポイント付与、商品購入が可能になっているのです。特に注目すべきは、顔認証による年齢確認機能です。人件費削減と顧客満足度向上の両立に成功しています。

日立は東武と共同で、「SAKULaLa」を2024年4月に東武ストア3店舗でスタートし、2025年1月15日には埼玉県越谷・川越エリアの飲食店、ホテル、雑貨店など20店舗で利用開始しています。そして2026年度にはファミリーマートへの導入予定など全国に利用可能エリアを拡大する予定です。

Amazon Oneが示す手のひら認証の未来

Amazonが展開する「Amazon One」は、手のひらをかざすだけで決済が完了する画期的なサービスです。手のひらの血管パターンを読み取ることで本人確認を行い、事前に登録したクレジットカードで自動決済されます。AWSクラウドで暗号化された情報を管理することで、セキュリティも万全です。

金融機関での多要素認証

銀行や金融機関では、口座アクセスや高額送金時に生体認証を活用しています。特に生体認証スマートカードは、カードに内蔵された指紋センサーで取引を認証する仕組みで、カード自体が盗まれても不正利用されるリスクを大幅に低減します。

生体認証技術の種類と特徴

主な生体認証技術には、それぞれ異なる特徴があります。

指紋認証は最も普及している方式で、スマートフォンでの採用率が高く、多くの人にとって身近な存在です。

顔認証は、Apple PayやSamsung Payなどのモバイル決済で広く採用されています。マスク着用時でも認証可能な技術も開発され、利便性がさらに向上しています。

静脈認証は、手のひらや指の静脈パターンを読み取る方式で、体内の情報を使用するため偽造が極めて困難です。

虹彩認証や音声認証は、セキュリティレベルは高いものの、技術的な課題や利用者の心理的抵抗感から、現時点では限定的な利用にとどまっています。

導入企業が得られる具体的なメリット

生体認証決済を導入することで、企業は以下のような実質的な効果を期待できます。

取引時間の大幅短縮：PIN入力や署名が不要になることで、顧客の待ち時間短縮だけでなく、レジの回転率向上による売上増加にも直結します。
不正利用による損失の削減：不正取引のリスクと不正利用による損失を大幅に低減することができます。
顧客データの活用による競争力強化：生体認証システムから得られる利用者の行動データを分析することで、パーソナライズされたマーケティングやロイヤルティプログラムの構築が可能になります。

普及に向けた課題と解決策

一方で、生体認証決済の普及にはいくつかの課題も存在します。

プライバシーへの懸念：NMIの2022年調査では、57歳以上の利用者の90%以上が生体認証決済を使用したことがないという結果が出ています。この世代間ギャップを埋めるには、データの安全性について丁寧な説明と、段階的な導入が不可欠です。
初期投資コスト：導入のハードルの1つとなっています。しかし、長期的には人件費削減や不正利用防止による損失回避を考慮すると、投資回収は十分可能です。
技術的な信頼性向上：正当なユーザーを認識できなかったり、間違った人物を誤って認証してしまったりするエラーによる不満やセキュリティ侵害などの顧客体験の悪化を防ぐ必要があります。