Visa・Mastercard・PayPal｜AIエージェントが代わりに買い物する時代。あなたの生活はどう変わる？

2025.08.06
読了時間目安 7分

私たちの支払い方法が、また大きく変わろうとしています。スマートフォンでの決済が当たり前になった今、次に注目されているのはAI（人工知能）が代わりに支払いを行う「エージェントコマース」です。
決済業界の大手である各社が、AIが私たちに代わって商品を購入し、支払いまで完了させる革新的な技術「エージェントコマース」を開発しています。この技術により、私たちの買い物体験は、根本的に、更なる変革が起こる可能性があるのです。
「今日の夕食の材料、いつものスーパーで買っておいて」「この服に合う靴を予算1万円で探して、レビューが4.5以上のものを注文して」。
まるでSF映画のような、AIとの会話で決済までできる未来がそこまできています。
本記事では、決済業界の主要プレイヤーであるVisa・Mastercard・PayPalの最新動向を基に、エージェントコマースの全貌と、それが私たちの未来にもたらす変化について解説します。

エージェントコマースとは何か？従来の決済との違い
現在の技術的実現可能性と課題
Visa・Mastercard・PayPalの取り組み
現状の「技術的実現可能性」と「課題」
一般ユーザーにとっての変化
- パーソナライゼーションの進化
- シームレスな決済プロセスへの変革
まとめ
参考・出典

エージェントコマースとは何か？従来の決済との違い

エージェントコマースとは、AI技術を活用して商取引を自動化・最適化する新しい商取引システムです。「AI商取引」とも言われます。
従来のオンラインショッピングでは、消費者が商品を検索し、比較検討し、購入手続きを行うという一連の作業を自分で行う必要がありました。しかし、エージェントコマースでは、AIエージェントがユーザーの代わりにこれらの作業を自動的に実行します。

例えば、「今日の夕食用に新鮮な魚を買いたい」とAIエージェントに伝えるだけで、AIが最適な店舗を選択し、在庫を確認し、配送時間を調整して、自動的に購入手続きを完了させることが可能になります。

現在の技術的実現可能性と課題

現在の技術レベル：現在のAI技術レベルでは、限定的な条件下でのエージェントコマースは十分実現可能です。自然言語処理、画像認識、予測分析などの技術が組み合わさることで、ユーザーの意図を理解し、適切な商品を選択し、決済を実行するシステムが構築できます。

解決すべき技術的課題：エージェントコマースの本格普及には、いくつかの技術的課題の解決が必要です。まず、異なるシステム間でのデータ連携の標準化が挙げられます。小売業者、決済プロバイダー、物流会社などの各システムが円滑に連携できる共通プロトコルの確立が重要です。

Visa・Mastercard・PayPalの取り組み

Visa・Mastercard・PayPal、各社の「エージェントコマース」の取り組みとその特徴的な取り組み内容について、各社のプレスリリースを基にご紹介します。

1.Visa

Visaは、「Visa Intelligent Commerce」という枠組みの中の「AI商取引 (AI commerce)」という言葉を使用しており、信頼性とリーチを活かしてAI商取引エコシステムを加速させています。
Visaは主に技術インフラの強化を通じてエージェントコマース市場への参入を図っています。同社が注目しているのは、AIエージェントとの連携を前提とした決済プラットフォームの構築です。
パートナーシップ戦略：Visaは世界規模でのエージェント決済ネットワークの構築に向けて、主要なテクノロジーパートナーとの戦略的連携を強化しています。

詐欺防止の対策：Visaは年間400億ドル以上の不正行為を防止しており、不正や紛争に対する保護を提供しています。

2.Mastercard

AI時代の商取引を強化する「Agent Pay (エージェントペイ)」という先駆的なエージェント決済テクノロジーを発表していますが、これはMastercardの具体的な製品名です。コンセプトは、AIエージェントが顧客に代わって商取引を実行するという共通の概念に基づいています。

セキュリティの強化：Mastercardは従来のセキュリティ基盤に加え、AIエージェント専用の認証システムを開発しています。これにより、人間が直接関与しない取引でも高いセキュリティレベルを維持できます。

リアルタイム処理：AIエージェントが瞬時に判断を下す特性に合わせ、決済処理の高速化を実現しています。従来の決済システムでは数秒かかっていた認証プロセスを、ミリ秒単位まで短縮することを目指しています。

API統合の簡素化：開発者がエージェントコマース機能を既存のプラットフォームに統合しやすくするため、包括的なAPIセットを提供しています。

3.PayPal

PayPalのエージェントコマースは「Agentic Commerce」と呼び、「AIが顧客や企業に代わって取引を行うこと」と定義しています。開発者や販売業者に次世代のショッピング体験を創造するために、既存のデジタルウォレット機能を拡張し、AIエージェントが利用しやすい形に最適化することに焦点を当てています。

開発者サポートの充実：エージェントコマースを迅速に実現するために、「Agent Toolkit」や業界初の「リモートMCPサーバー」といった開発者ツールを提供しています。

グローバル展開：PayPalの既存の規模と範囲を活用し、エージェントコマースのグローバル展開を加速させています。世界中でエージェント・コマースを促進するためのオープンなプラットフォームになるよう基盤を構築しています。

現状の「技術的実現可能性」と「課題」

解決すべき技術的課題：エージェントコマースの本格普及には、いくつかの技術的課題の解決が必要です。データプライバシー、取引セキュリティ、不正等に対する一連の保護の提供、受け入れ態勢を強化するための業界のベストプラクティスの確立など、乗り越えなければならないハードルがあるようです。

一般ユーザーにとっての変化

パーソナライゼーションの進化

AIエージェントが、個人のスタイルや支出習慣、過去の好みなどに基づいて、ファッションアイテム、旅行プラン、イベント手配、座席の推薦といった商品やサービスを厳選して提案し、購入まで実行します。

シームレスな決済プロセスへの変革

支払い、配送追跡、請求書管理、ソフトウェアサブスクリプションの更新などがAIエージェントによって自動的かつ効率的に処理され、ユーザーの手間を大幅に削減します。
旅行やイベントの計画から予約、支払いまで、AIがスムーズに代行することで、より快適な体験を提供します。Mastercardの「Agent Pay」も、製品やサービスの検索から支払い、返品までAIエージェントが管理し、商取引を効率化します。消費者は、会話型のコマース体験でPayPalの認証情報とスマートウォレット機能を使い、適切な決済手段でシームレスに支払いを完了できるようになります。