SaaS is Dead?2025年に見えてきた新たな市場動向と可能性

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2024年12月、Microsoft CEOのサティア・ナデラ氏がBG2ポッドキャストで発言した「
従来のビジネスアプリケーション、特に多くの古典的なSaaSアプリケーションは、AIとクラウドコンピューティングの急激な進化により、間もなく崩壊するか大幅な停止を余儀なくされる」と発言しました。
この発言から、SaaS(Software as a Service)の終焉を意味する「SaaS is Dead」という言葉で業界に大きな波紋を呼びました。
この発言は、SaaS(Software as a Service)の終焉を意味するものではなく、むしろ業界の進化への転換点を示唆しています。ナデラ氏の発言を分析すると、SaaS市場は「終了」ではなく「変革」の時代に突入していて、進化する必要性を強調したメタファーと理解すべきでしょう。
発言から約半年が経過した今現在、この変革はどうなっているのか、動向から今後の可能性が見えてきました。

世界のSaaS市場の現状と成長予測

市場規模の驚異的成長

Grand View Researchの最新調査によると、グローバルSaaS市場は2024年に3,991億ドルに達し、2025年から2030年にかけて年平均成長率12.0%で成長し、2030年には8,192.3億ドルに達する見込みです。この成長は、企業のクラウドサービス採用拡大、リモートワークの浸透、そしてデジタル変革の加速によって支えられています。

地域別市場動向

北米市場は2024年に43%以上のシェアを占め、世界最大の市場を維持しています。これは米国の強固なIT基盤と、Salesforce、Microsoft、Googleなどの主要SaaS企業の存在によるものです。一方、アジア太平洋地域は予測期間中最高の成長率を記録する見込みで、中国、インドでのデジタル変革イニシアチブが成長を牽引しています。

日本のSaaS市場で起きている変化

ファーストライト・キャピタルが発行した最新レポートによると、日本のSaaS市場は転換点に立っています。

成長を続ける上位企業群

日本の上場SaaS企業では興味深い二極化が進んでいます。
2025年2月時点、ラクスはARR(年間経常収益)が400億円台に到達しランキングトップになり、ラクス含めた上位6社は300億円に到達していますが、ランキング7位の企業のARRは約170億円となり差は約130億円。ARR100億円越え企業は12社いて、半数以下はランキング1位のARRの半分に満たない結果となりました。
また、ラクスなどの上位5社がARR100億円を超えたあとの5年間CAGRは、25%を上回っているようで、継続的な成長が見られるとのことです。

これは、優秀なSaaS企業が規模拡大後も成長を維持できることを実証しています。

投資環境の変化と新たな課題

2024年のSaaS企業への投資状況も変化しています。2024年のSaaS企業による資金調達総額は1,357億円となり、前年からわずかに減少したものの、1件あたりの調達額中央値は2.5億円で、上昇傾向が続いています。

さらに、東京証券取引所の新たな上場維持基準により、上場から5年以内に株式時価総額が100億円に達しない企業を上場廃止とする方針が示され、SaaS企業にとってより厳しい成長要求が突きつけられています。

金融業界にみる日本のSaaS変革の実例

日立とIBMの戦略的連携

2025年3月17日、全体最適化をめざしたDXを推進することを目的として日立の「信用金庫DXサービス」と日本IBMの「金庫デジタルサービス・プラットフォーム(DSP)」を連携しました。既存のレガシーシステムとシームレスに繋がり、統一フレームワークでの運用を実現し、融資業務の大幅な効率化と低コストでの運用が可能になりました。
また、AWS(Amazon Web Services)のクラウドサービス上でこれらのサービスを連携させることで、各信用金庫が地域ごとのニーズに合わせてサービスを柔軟に選択・利用できる環境を提供します。
今後も生成AIを活用するなど、融資業務における広範囲のDX変革に継続して取り組んでいくとのことです。

富士通のSalesforce融資DXソリューション

富士通はSalesforceのワンプラットフォームでCloud Lendingによる融資審査業務の効率化・最適化と新たな”顧客体験”の実現を提供しており、従来のアナログ業務をデジタル化で解決する具体例を示しています。
具体的には、デジタルチャネルを利用した申し込みから完了までの完全オンライン化や、Webポータルでの各種手続き完結により、時間や場所にとらわれない非対面でのやり取りを可能にしています。これにより、融資実行までの期間短縮、書類のやり取りによる顧客の不便さの解消、融資審査業務における手作業による事務負担の軽減など、従来のアナログ業務が抱えていた課題をデジタル化で解決しています

バーティカルSaaS:特化型ソリューションの台頭

市場では、特定業界に特化したバーティカルSaaS(特定の業界や業種に特化したSaaS)が急成長しています。バーティカル領域においても、SaaS企業がARR(年間経常収益)100億円に到達するケースが増え始めている状況です。

介護事業者向けにサービスを展開するエス・エム・エス(カイポケ)が約5.4万事業所に導入されるSaaSに加え、ファクタリングなどの金融サービスや、非SaaS事業による収益も大きく貢献しており、単一のSaaSソリューションから総合的なビジネスプラットフォームへの進化を示しています。

2025年以降のSaaS市場予測:三つの重要トレンド

1. プロダクトの本源的価値への回帰

AIエージェントの登場により、ソフトウェアの大量生産が可能になると、供給過剰による価格競争が必ず起きると予想されています。ユーザーにとって必須ではないSaaSは、一気に淘汰されていく可能性があります。

この変化により、真に価値あるソリューションを提供できるSaaS企業のみが生き残る未来が考えられます。

2. M&Aによる業界再編の加速

2024年、SaaS企業をめぐるM&Aの動きが相次いでいます。一例としては、アスエネやアンドパッドといったレイターステージのスタートアップが、事業領域の拡大を目的とした買収を発表しました。

今後は、単独での成長よりも戦略的な統合による価値創造が重要になります。

3. グローバル展開とクロスボーダー投資

近年では建設業や製造業といった日本の基幹産業をターゲットとするスタートアップが台頭し、海外投資家から大型資金を調達する事例も相次いでいる状況です。

日本発のSaaS企業が世界市場に挑戦する機会が拡大していくと予想できます。

まとめ:SaaSは終わらない、進化する

「SaaS is Dead」は、従来型のSaaSモデルの限界を指摘したものであり、SaaS産業全体の終焉を意味するものではありません。むしろ、AIとの統合、バーティカル化、プラットフォーム化という三つの方向性で、SaaSは新たな価値創造の形態へと進化を続けています。

日本のSaaS市場においても、上位企業の継続的成長、特化型ソリューション(バーティカルSaaS)の台頭、そして国際展開の活発化が見られます。重要なのは、技術の進歩に適応し、真に顧客の課題を解決する価値あるソリューションを提供し続けることです。

SaaS業界でも、AI時代に適応した「顧客の成功を共創する」新しいビジネスモデルを構築できる企業のみが、次の成長ステージに進むことができるのです。

参考・出典

本記事は、以下の資料を基に作成しました。


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