NFTとは？
NFTは「Non-Fungible Token（ノン・ファンジブル・トークン）」の略で、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれています。「偽造・改ざん不能のデジタルデータ」であり、ブロックチェーン上でデジタルデータに「唯一性を付与して真贋性を担保する機能」を持つことです。具体的には、ブロックチェーンという改ざんが極めて困難なデジタル台帳技術を使って、「このデジタルデータは唯一無二の本物である」「現在の所有者は〇〇さんである」といった情報を記録します 。この記録は、世界中のコンピューターに分散して保存されるため、誰か一人がデータを書き換えようとしても、他の大多数の記録と食い違うため、不正や改ざんができない仕組みになっています 。ただし、ブロックチェーン上にはNFTの取引履歴が記録されるが、一般的に、NFTに紐づけられたコンテンツ自体はブロックチェーン上には記録されず、ブロックチェーン外のサーバに保存される仕組みであるため、そのコンテンツの複製や修正を技術的に不可能にするものではありません。
もっと簡単に説明すると、「デジタル上で唯一無二の証明書がついたデータ」についている「証明書」そのものが「NFT」です。例えるなら絵画です。本物のモナリザの絵は世界に1枚しかありませんし、たとえ精巧な複製画を作っても、それは「本物」ではありません。NFTは、このような「本物であることの証明」をデジタルデータにも適用できるようにした技術です。
例えば、あなたが撮影した写真をデジタル化してインターネット上に流したとき、通常なら誰でもコピーできてしまいます。しかし、NFTの技術を使えば、その写真に「これが本物です」という証明書を付けられるだけでなく、その証明書であるNFT自体の複製も修正もできないのです。ただし、あくまでNFT（NFTトークン）自体が複製や修正などの改ざんができないだけであって、そのNFTに紐づけられているデータそのものが、改ざんを不可能にするわけではないのでご注意ください。あくまで「唯一の本物である」と証明ができるだけなのです。
NFTの特徴
NFTの特徴を5つご紹介します。
唯一性：デジタルデータに個別の識別番号をつけることで、世界に一つだけのものとして認識できます。
取引可能性：専用のマーケットプレイスで自由に売買できます。
規格化：共通の規格（ERC-721など）により、異なるサービス間でも利用可能です。
相互運用性：対応するウォレットやマーケットプレイスで共通して使えます。
プログラマビリティ：転売時に元の作者に自動的にロイヤリティが支払われる仕組みなどを組み込めます。
NFTの実際の活用事例
NFTは現在、さまざまな分野で活用されています。
デジタルアート分野では、アーティストが作成したデジタル作品にNFTを付与することで、その作品の希少性と価値を保証しています。購入者は、NFTを所有することで、その作品の正当な所有者であることを証明できます。
ゲーム分野では、「The Sandbox」や「My Crypto Heroes」といったゲーム内のキャラクターやアイテムがNFT化されています。従来、ゲーム内で入手したアイテムはそのゲーム内でしか使えませんでしたが、NFT化されたアイテムは他のゲームで使用したり、マーケットプレイスで売買したりすることが可能になります。
音楽分野では、アーティストが楽曲の原盤権の一部をNFTとして販売する事例が出てきています。ファンは、好きなアーティストの楽曲の一部を「所有」できるようになりました。
スポーツ分野では、NBAの試合のハイライトシーンをNFT化した「NBA Top Shot」が人気を集めています。ファンは、お気に入りの選手のプレーシーンをデジタルトレーディングカードとして収集できます。
なぜNFTを知っておくべきなのか
NFTによってデジタルデータにも希少性が生まれ、現実世界の絵画や不動産のように、資産として取引できるようになった現代。NFTが注目される理由は大きく3つあります。
- デジタル社会の新しい基盤技術だから
私たちの生活はますますデジタル化しています。音楽はストリーミングで聴き、写真はスマートフォンで撮影し、仕事もオンラインで行うことが増えました。NFTは、このデジタル社会において「所有」という概念を確立する重要な技術です。今後、デジタルアートや音楽、ゲーム内アイテムなど、さまざまな分野で活用される可能性があります。
- 投資対象として注目されているから
2021年、デジタルアーティストBeepleの作品が6,935万ドル（約75億円）で落札されたニュースは世界中で話題になりました。日本でも、国内の暗号資産取引所における口座開設数は延べ1,200万口座を超え、利用者の預託金残高は5兆円以上に達しています。特に注目すべきは、利用者の約7割が年収700万円未満の中間所得層であり、86％の利用者が長期的な値上がりを期待して取引を行っているという点です。
- 消費者保護の観点から理解が必要だから
残念ながら、NFTを悪用した詐欺や不正な勧誘も増えています。金融庁の「金融サービス利用者相談室」には、暗号資産に関連する相談が月平均300件以上寄せられており、その大半は詐欺的な投資勧誘に関するものです。正しい知識を持つことで、自分自身を守ることができます。
NFTのリスクと注意点
NFTには大きな可能性がある一方で、注意すべき点も多くあります。
価格変動リスク：NFTの価格は大きく変動します。高額で購入したNFTが、その後大幅に値下がりすることもあります。消費者庁によると、NFT購入者の約半数が「偽物NFTではないか」「価格操作されていないか」という不安を抱えています。
詐欺リスク：SNSやマッチングアプリを通じた詐欺的な勧誘が増えています。「必ず値上がりする」「高配当が得られる」といった甘い言葉には注意が必要です。消費者庁によると、NFT取引経験者の約3割が「トラブルや困ったこと等にあったことがある」と回答しています。
技術的なハードル：NFTを購入するには、暗号資産取引所の口座開設やウォレットの作成など、複雑な手続きが必要です。調査によると、購入者の約4割が「暗号資産取引所の口座開設」や「ウォレットの作成」が難しかったと回答しています。
法的な不確実性：NFTを購入しても、必ずしもコンテンツの著作権を取得できるわけではありません。多くの場合、利用許諾契約に基づいた限定的な利用権のみが付与されます。
まとめ：NFTとどう向き合うべきか
NFTは、「デジタル上で唯一無二の証明書がついたデータ」についている「証明書」そのものを指し、デジタル社会における「所有」の概念を変える革新的な技術です。しかし、新しい技術であるがゆえに、リスクも存在します。
NFTに興味を持った方は、以下の点に注意してください：
- 少額から始める：いきなり高額な投資をするのではなく、失っても困らない金額から始めましょう。
- 情報収集を怠らない：公式サイトや信頼できる情報源から情報を収集し、詐欺的な勧誘に注意しましょう。
- 技術的な理解を深める：NFTの仕組みや、購入・保管方法について基本的な知識を身につけましょう。
- 長期的な視点を持つ：短期的な値上がりを期待するのではなく、技術の将来性を見据えた判断をしましょう。
NFTは、私たちのデジタル生活をより豊かにする可能性を秘めた技術です。正しい知識を持ち、適切に活用することで、新しいデジタル社会の一員として、その恩恵を受けることができるでしょう。ただし、投資として考える場合は、必ずリスクを理解した上で、自己責任で判断することが重要です。
参考・出典
本記事は、以下の資料を基に作成しました。
- 金融庁（https://www.fsa.go.jp/）：事務局説明資料（暗号資産に係る規制の見直しについて）(2025年9月2日)（アクセス日：2025年09月08日）
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/angoshisanseido_wg/gijishidai/20250902/05.pdf - 消費者庁（https://www.caa.go.jp/）：NFTの動向整理(2022年6月23日)（アクセス日：2025年09月08日）
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/assets/internet_committee_220715_08.pdf - 消費者庁（https://www.caa.go.jp/）：NFTの利用状況に関するアンケート結果(2022年6月23日)（アクセス日：2025年09月08日）
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/meeting_materials/assets/internet_committee_220715_03.pdf
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