JPモルガンだけじゃない!日本の銀行が挑む預金トークン化の最前線

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金融業界で今、大きな注目を集めているのが「預金のトークン化」です。ブロックチェーン技術を活用して、従来の銀行預金をデジタルトークンとして発行するこの取り組みは、世界各国で急速に進展しています。決済の利便性を飛躍的に向上させながら、預金の安全性を維持できるこの技術は、次世代の金融インフラとして期待されています。

預金のトークン化とは何か

預金のトークン化とは、民間銀行の預金にブロックチェーンや分散台帳技術を応用し、デジタルトークンとして発行するものです。「トークン化預金」や「預金トークン」とも呼ばれています。

現在の銀行預金も電子的に管理されていますが、トークン化された預金は、ブロックチェーン上で発行・流通する点が大きく異なります。日本銀行の報告書によれば、預金のトークン化は「預金という伝統的な支払手段に関して、分散型台帳技術(DLT)などの技術を活用した決済の機能拡張」を目指すものとされています。

ステーブルコインとの決定的な違い

預金のトークン化は、ステーブルコインと混同されがちですが、両者には重要な違いがあります。
最大の違いは発行主体と規制の枠組みです。トークン化預金は銀行が発行する預金であり、銀行規制や預金保険の対象となります。一方、ステーブルコインは必ずしも銀行が発行するものではなく、規制の枠組みも異なります。

JPモルガンの関係者は、預金トークンのメリットについて「機関投資家がより速く簡単に資金を移動できるようにしながら、従来の銀行システムとの密接な関係を維持できる」点を強調しています。
デジタル通貨フォーラムの山岡座長は、預金の安全性について「銀行預金には各国で預金保険が適用されており、中央銀行の債務である現金や中央銀行預金などのベースマネーと民間銀行預金が常に1対1で交換可能な状態を保つ仕組みが整っている」と説明しています。

世界で進む預金のトークン化

各国で預金のトークン化への取り組みが加速しています。

米国:2025年6月、JPモルガン・チェースは預金トークン「JPMD」を発表しました。コインベースのパブリックブロックチェーン「Base」上で展開され、機関投資家向けに24時間決済や利息の支払いを可能にします。JPモルガンは2019年から「JPM Coin」を展開しており、その進化版として位置づけられています。

また、シティバンクなどが主導する「RLN(Regulated Liability Network)」も、2022年から展開されており、ニューヨーク連邦準備銀行との共同実験も行われています。

ドイツ: ドイツでは、複数の大手銀行が協力して「CBMT(Commercial Bank Money Token)」と呼ばれる取り組みを2021年から進めています。

韓国:2023年12月のIMF・韓国合同国際コンファレンスで、韓国銀行(中央銀行)のリー総裁がトークン化預金の実証実験を推進する方針を表明しました。

日本における取り組み

日本でも預金のトークン化への動きが本格化しています。

デジタル通貨フォーラムとDCJPY

2020年に設立された「デジタル通貨フォーラム」は、100社以上の企業や自治体で構成され、銀行が発行する円建てのデジタル通貨の実現を目指しています。このフォーラムから生まれたのが「DCJPY」というデジタル通貨プラットフォームです。

北國銀行の地域金融イノベーション

2024年4月、北國銀行はDigital Platformerと共同で、日本初の預金型ステーブルコイン「トチカ」のサービスを開始しました。デジタル地域通貨サービス「トチツーカ」の一環として展開され、1トチカ=1円で利用できます。特筆すべきは、加盟店の決済手数料が0.5%(税込)という国際的にも最低水準である点です。

トチカは銀行預金口座からチャージでき、換金も可能なため、真の意味での預金型ステーブルコインとして機能します。石川県珠洲市から始まり、県内他自治体への展開や、他金融機関との連携も視野に入れています。個人間送金機能も2024年内に実装予定で、地域のデジタルシフトを推進しています。

GMOあおぞらネット銀行の実用化

2024年7月、GMOあおぞらネット銀行はディーカレットDCPが提供する「DCJPYネットワーク」上で、デジタル通貨DCJPYの発行を開始しました。インターネットイニシアティブ(IIJ)との協業では、環境価値をデジタルアセット化し、DCJPYによる決済取引を実用化しています。これは非化石証書をブロックチェーン上でデジタル化し、二次流通の可能性も検討する先進的な取り組みです。

SBI新生銀行の国際展開

2025年9月、SBI新生銀行、Partior、ディーカレットDCPの3社は、トークン化預金での外貨取引に関する戦略的パートナーシップを締結しました。この取り組みは、日本の預金トークン化が国際的な段階に進んだことを示す画期的なものです。

Partiorは、DBS、JPモルガン、スタンダードチャータード銀行、ドイツ銀行などの大手外国銀行に提供するマルチ通貨決済プラットフォームを運営しています。この提携により、国内のトークン化預金とPartiorのグローバル決済ネットワークが接続され、USD/EUR/SGDなどのマルチカレンシーでのトークン化預金取引・実績が可能になります。

24時間365日、リアルタイムでクロスボーダー決済が可能となることで、日本企業の海外送金コストと時間を大幅に削減できる可能性があります。

ゆうちょ銀行の参入

2025年、ゆうちょ銀行はディーカレットDCPが提供するプラットフォームを利用し、2026年度中を目途にトークン化預金の取扱いを開始すると発表しました。個人・法人向けにサービスを提供し、NFTやセキュリティトークンの取引に連動する決済手段として展開する予定です。

預金のトークン化がもたらす3つの革新

預金のトークン化は、従来の金融インフラに3つの大きな革新をもたらします。

  1. 24時間365日の即時決済:ブロックチェーン技術により、銀行の営業時間や電算センターの稼働時間に制約されることなく、いつでも決済が可能になります。
  2. スマートコントラクトによる自動決済:スマートコントラクト機能を活用することで、資金とモノの「同時受け渡し(DVP)」や資金同士の「同時決済(PVP)」が実現できます。例えば、部品が工場に納入されたら自動的に支払いが実行される、といった自動化された取引が可能になります。
  3. 高い透明性とトレーサビリティ:ブロックチェーン上で取引が記録されるため、透明性が高く、追跡可能な決済が実現します。

法的課題と今後の展望

預金のトークン化には、法的な課題も残されています。

日本銀行の「トークン化された資産の権利関係(2025年7月18日)」という論文によれば、「トークン化された預金での支払が私法上どのように位置づけられ、スマートコントラクトの活用が法的安定性にどのような影響を及ぼすか」といった論点があります。論文では、スイス、ドイツ、フランス、米国の法整備が分析され、権利関係の明確化に向けた示唆が示されています。

まとめ:金融インフラの未来を担うトークン化預金

預金のトークン化は、銀行預金の安全性と新技術のメリットを両立させる、次世代の金融インフラとして世界中で注目されています。日本でも、ゆうちょ銀行をはじめとする大手金融機関が参入を表明し、2026年度には実用化が始まる見込みです。

決済の即時性、スマートコントラクトによる自動化、透明性の向上といったメリットは、企業間取引や国際決済の効率を大幅に改善する可能性を秘めています。法的な課題の整備が進めば、預金のトークン化は私たちの経済活動を支える重要なインフラとなるでしょう。


参考・出典

本記事は、以下の資料を基に作成しました。


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