COBOLを学ばずにレガシーシステムを近代化!3ステップフレームワーク【GitHub Copilot活用ガイド】

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レガシーシステムを刷新するのは、多くの企業にとって避けて通れない問題です。特に65年の歴史を持つCOBOLで動いているシステムを抱える金融機関や行政機関では、喫緊の課題と言えるでしょう。GitHub CopilotとAIエージェントは、この課題への新たな道筋を示唆しています。

COBOLを学ばずにシステムを近代化する時代

MicrosoftのJulia Kordick氏は、COBOLの経験がなかったにもかかわらず、AIを駆使してCOBOLシステムの刷新に成功しました。彼女は自身のAIに関する専門知識と、COBOL技術者のドメイン知識を組み合わせ、プロジェクトを成功に導いたのです。

ここで重要なのは、AIが開発者の代わりになるのではなく、能力を拡張する点です。COBOL技術者の知識、現代的な開発者の知識、そしてAIのパターン認識能力。この3者が連携することで、レガシーシステムの刷新が現実的なものになります。

実践的な3ステップフレームワーク

Julia氏のチームは、COBOLに限らずあらゆるレガシーシステムに適用可能な体系的なフレームワークを開発しました。

ステップ1:コードの準備(リバースエンジニアリング)

レガシーシステムの最大の問題は、組織がコードが実際に何をしているのか理解していないことです。GitHub Copilotを考古学的ツールとして活用することで、次のことが可能になります。

  • レガシーファイルからビジネスロジックを抽出
  • すべてをMarkdown形式でドキュメント化
  • 処理の流れと依存関係を自動的に特定
  • 不要なコメントや履歴ログのクリーンアップ

これは、いわばブラックボックス化した城の「設計図」をAIに復元させる作業(リバースエンジニアリング)です。
そして重要なのは、AI生成の分析を必ず人間の専門家がレビューすることです。AIはパターン認識に優れていますが、ビジネスコンテキストにはドメイン知識が不可欠だからです。

ステップ2:エンリッチメント(AIが理解しやすくする)

コードにコンテキストを追加することで、AIの理解を深めます。

  • 翻訳:非英語のコメントを英語に変換することで、モデルの性能を向上。
  • 構造分析:COBOLは決定論的なパターンを持ち、常に4つのDivision構造に従います。この予測可能な構造を活用し、GitHub Copilotに「このCOBOLファイルのすべてのDivisionを特定し、それぞれが何をするか要約して」といったプロンプトを使用する。
  • ドキュメントを真実の情報源に:AI生成のすべてをMarkdownファイルとして保存し、主要な参照資料とする。

ステップ3:自動化支援(プロセスのスケーリング)

個々のファイルの分析が完了したら、それらがどのように連携しているかを理解する必要があります。ここでは、Copilotの対話的な使用から、AIエージェントによる自動化ワークフローの構築へと移行します。

Julia氏のチームは、Microsoft Semantic Kernelを使用して複数の専門エージェントを orchestrate するフレームワークを構築しました。

  • コールチェーンマッピング:ファイル間の相互作用を示すMermaid図を生成する。
  • テスト駆動近代化:ビジネスロジックを抽出し、それを検証するテストケースを生成し、それらのテストに合格する最新のコードを生成する。
  • 依存関係の最適化:使用しているサードパーティCOBOLライブラリを分析し、最新の代替手段が存在するかをチェックする。

実用的なオープンソースフレームワーク

Julia氏のチームは、フレームワーク全体をオープンソース化しました。GitHub上の「Azure-Samples/Legacy-Modernization-Agents」として公開されており、誰でも利用可能です。セットアップは驚くほどシンプルで、わずか数行のコマンドで環境構築から近代化プロセスの開始まで実行できます。

このフレームワークは、Microsoft Semantic Kernelを使用したエージェント オーケストレーションで構築されており、複数の専門エージェントが連携して作業を処理します。

現実的な期待値の設定

Julia氏は制約についても率直に語っています。「ワンクリックですべてのメインフレーム問題を解決できると約束している人は、嘘をついています」と彼女は警告します。

現実には

  • バリデーションのために人間がループに留まる必要がある
  • 各COBOLコードベースはユニークで複雑
  • エージェントAIの旅はまだ初期段階
  • 完全な自動化はおそらく少なくとも5年先

しかし、それは今日大きな進歩を遂げられないという意味ではありません。

ビジネスケースの変革

従来のアプローチは、高額なコンサルタントを雇い、手動変換に5年以上を費やし、最終的に保守が困難な自動生成コードを手にするというものでした。コンサルタントが去った後、内部チームは理解できないコードを、まだ学習中の言語でメンテナンスすることになります。

AI活用アプローチはこれを変えます。AIを使用してビジネスロジックを理解し、人間が読める最新のコードを生成し、知的財産の管理を維持できます。チームはプロセス全体に関与し続け、進めながらビジネスロジックを学習します。最終的に生まれるコードは、開発者が実際に扱えるものなのです。

今日から始められる実践的ステップ

COBOLであれ、古いJavaであれ、どんなレガシーシステムに対しても、今日から始められます。

  • 小さいシステムを選んで、小さく始める
  • GitHub Copilotでファイルを分析する
  • 分析結果をドキュメント化する
  • チーム内で情報を共有する
  • Azure Samplesフレームワークを試す
  • プロンプトを調整する
  • クラウド環境への移行を検討する
  • 分散システムを視野に入れる
  • COBOLプログラムをCRUD操作として考える

レガシーコードの刷新は、早ければ早いほど良いでしょう。AI技術の進歩により、レガシーシステムの刷新は現実的な手段となっています。人の知識とAIの能力を組み合わせることで、組織のシステムをより良くすることが可能です。


参考・出典

本記事は、以下の資料を基に作成しました。


AI利用について

本記事はAIツールの支援を受けて作成されております。 内容は人間によって確認および編集しておりますが、詳細につきましてはこちらをご確認ください。

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