「SaaSは死んだ」は本当か? 最新データとAI動向から読み解く2026年の真実

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「SaaS is Dead(SaaSは死んだ)」——2024年12月、MicrosoftのCEOサティア・ナデラ氏がポッドキャスト「BG2」で語ったこの一言は、テクノロジー業界に大きな波紋を広げました。従来型のビジネスアプリケーションがAIエージェントに取って代わられるという、挑発的とも言える予測。SaaSビジネスに携わる方、SaaS製品を利用している企業担当者の方にとって、この発言は無視できないものでしょう。
結論から申し上げると、SaaSは「終わる」のではなく、AIと融合しながら大きく「進化」しています。むしろ、SaaS市場は今なお拡大を続けており、AIの登場はSaaSの価値を減らすどころか、新たな可能性を切り拓いています
本記事では、ナデラ氏の発言の真意から、AIエージェントの最新動向、そしてSaaS市場のリアルなデータまでを整理し、SaaSの将来性について多角的に解説します。

ナデラ氏が語った「SaaS is Dead」の真意

サティア・ナデラ氏の発言をそのまま受け取ると、すべてのSaaS企業が消滅するかのように聞こえます。しかし「SaaS is Dead?2025年に見えてきた新たな市場動向と可能性」でもお伝えしたように、実際にナデラ氏が指摘したのは、もっと構造的な変化でした。

ナデラ氏の主張の要点は、「現在のビジネスアプリケーションがデータベースのCRUD(作成・読み取り・更新・削除)操作の上に薄いUI層を載せた構造であり、このビジネスロジックがAIエージェント層に移行する」というものです。つまり、CRM・ERP・プロジェクト管理といった個別のアプリケーションを人間が操作する時代から、AIエージェントが複数のデータベースやシステムを横断的に処理する時代への移行を予見しています

出典:BG2 Podcast “Applications as we know them are going away in favor of agents.”(2025年1月17日)
https://dynatechconsultancy.com/blog/saas-is-gone-why-did-microsofts-ceo-satya-nadella-claim-this

ここで重要なのは、ナデラ氏が否定しているのは「従来型SaaSのUI中心のモデル」であって、「クラウドベースのソフトウェア提供そのもの」ではない点です。

データが示すSaaS市場の「今」

「SaaS is Dead?」というセンセーショナルな見出しとは裏腹に、市場データは全く異なる状況を示しています。

グローバルSaaS市場の規模は、2025年時点で約4,082億ドル(約60兆円超)と推定されています。さらに、2026年には約4,650億ドルに成長し、2034〜2035年にかけて約1兆3,000億〜1兆4,800億ドルに達するとの予測が複数の調査機関から出ています。年平均成長率(CAGR)は12〜18%台で推移する見込みです。

出典:Precedence Research “Software As A Service (SaaS) Market”(2026年1月19日更新)
https://www.precedenceresearch.com/software-as-a-service-market

特筆すべきは、この成長を牽引しているのがまさにAI関連のSaaSであるという事実です。AI搭載型SaaS(AI-native SaaS)への企業支出は前年比393%の伸びを記録しているとの報告もあり、AIはSaaSを脅かすどころか、新たな成長エンジンとなっています。

出典:Zylo’s 2026 SaaS Management Index(2026年2月8日)
https://zylo.com/blog/saas-statistics/

また、B2B SaaS市場に目を向けると、2025年の3,900億ドルから2031年には約1兆5,782億ドルへ拡大すると見込まれ、CAGR 26.24%という力強い成長が予測されています。CRM分野だけでもSalesforceが2024会計年度に349億ドルの売上を記録しており、SaaS市場の基盤は依然として盤石です。

出典:Mordor Intelligence “B2B SaaS Market Size, Share Analysis, Growth Report 2026–2031″(2026年1月16日更新)
https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/b2b-saas-market

AIエージェントの台頭と大手企業の戦略

SaaSの進化を語る上で、2025年後半から2026年にかけて加速するAIエージェント分野の動向は見逃せません。主要プレイヤーの動きを確認しましょう。

Salesforce:Agentforceの本格展開

Salesforceは2026年1月の「Spring ’26 Release」で、AIエージェントを中核に据えた大型アップデートを発表しました。AI搭載の「Sales Workspace」、AIが顧客の問題を事前に検知する「Proactive Service」、AIエージェントが自律的にメール応答を行う「Conversational Email」など、同社のプラットフォーム全体にエージェント機能が組み込まれています。同社はこの方向性を「Agentic Enterprise(エージェント型企業)」と呼び、人間とAIエージェントが協働する未来を描いています。

注目すべきは、SalesforceはSaaSのビジネスモデルを捨てたのではなく、既存のSaaSプラットフォームの上にAIエージェント機能を積み重ねているという点です。これは「SaaSの終焉」ではなく「SaaSの進化」の好例と言えます。

Anthropic:CoworkとLabsの始動

AI企業のAnthropicは2026年1月、AIアシスタントClaudeをベースにした新しいエージェント型ツール「Cowork」をリサーチプレビューとして公開しました。Coworkは、ユーザーのPC上のフォルダにアクセスし、ファイルの整理・スプレッドシートの作成・レポートの下書きなどを自律的に行うことができます。同社はこれを「開発者でなくても使えるClaude Code」と位置づけています。

さらにAnthropicは、実験的なプロダクト開発チーム「Labs」の拡大も発表。Instagramの共同創業者であるMike Krieger氏がLabsに参加するなど、AIエージェントの実用化に向けた投資を強化しています。

OpenAI:Frontierプラットフォームの投入

OpenAIは2026年2月、エンタープライズ向けAIエージェントプラットフォーム「Frontier」を発表しました。Frontierは、企業内のデータウェアハウスやCRM、チケットシステムなどを統合し、AIエージェントに「共有ビジネスコンテキスト」を提供するプラットフォームです。HP、Oracle、State Farm、Uberなどが初期導入企業として名を連ねています。

これはAIが既存のSaaSと深く「連携」し、文脈を理解して業務を遂行する方向性を示唆しています

「SaaS → Service as Software」への転換

こうした動きを俯瞰すると、業界全体で起きているのは「Software as a Service(ソフトウェアをサービスとして提供する)」から「Service as Software(サービスをソフトウェアが自律的に実行する)」への転換です。

従来のSaaSは、人間がソフトウェアを操作して業務を遂行するモデルでした。今後は、AIエージェントがソフトウェアを操作して、人間に代わり業務を遂行するモデルへ移行しつつあります。この変化がもたらす影響は、主に3つの領域に及びます。

  1. 料金モデルの変革Gartnerは2027年までに主要SaaSベンダーの70%が消費ベースの価格設定を導入すると予測しており、単純なユーザー数課金からの移行が進んでいます
  2. UIの再定義:複雑なダッシュボードやフォームの代わりに、自然言語による指示やAIエージェントとの対話が主要なインターフェースとなっていく可能性があります。
  3. 業務プロセスの再設計個別のアプリ操作ではなく、AIがデータを統合し、成果に基づいて自律的に業務を遂行する形へシフトします。アプリケーション単位ではなく、エンドツーエンドの業務成果に基づいたワークフロー設計が主流になります。

SaaSビジネスに関わる方が今とるべき3つのアクション

こうした変化を踏まえ、SaaSビジネスの関係者やSaaS製品の導入企業が取り組むべきことを整理します。

  • AI機能の統合の加速:自社のSaaS製品やサービスにAIエージェント機能をどのように組み込めるかを具体的に検討すべき段階です。
  • 価格モデルの見直し:シートベースの課金から、成果ベースや消費量ベースへの移行は、一朝一夕にはできません。今から段階的に新モデルの検討・テストを始めることで、市場変化への対応力が高まります。
  • 「人間+AIエージェント」の協働体制を設計:AIが人間を完全に代替するのではなく、AIエージェントと人間がそれぞれの強みを活かして協働する仕組みが、これからの競争優位の源泉となります。Salesforceが掲げる「Agentic Enterprise」の概念は、まさにこの方向性を体現しています。

まとめ:SaaSは「死」ではなく「変態」の途上にある

改めて結論を述べると、SaaSは終わるのではなく、AIと融合しながら新しい形へと進化しています。

市場データは一貫してSaaSの拡大を示しており、主要プレイヤーもSaaSプラットフォームの上にAIエージェント機能を構築しています。ナデラ氏の「SaaS is Dead」は、従来型の静的なSaaSモデルへの警鐘であり、SaaSそのものの否定ではありません。

むしろ、AIの進化はSaaSにとって最大の成長機会です。AIエージェントの普及は、SaaS製品に新たな付加価値を与え、利用範囲を飛躍的に拡大させます。重要なのは、この変化を脅威と捉えるか、チャンスと捉えるか。SaaSの将来性を正しく評価し、次の一手を打てるかどうかが、今後のビジネスの明暗を分けることになるでしょう。


参考・出典

本記事は、以下の資料を基に作成しました。


AI利用について

本記事はAIツールの支援を受けて作成されております。 内容は人間によって確認および編集しておりますが、詳細につきましてはこちらをご確認ください。

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