サウジ初のRWAセンター設立で加速!RWAトークン化“規制動向”まとめ【米国・EU・アジア・中東】

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不動産や債券といった伝統的な資産をブロックチェーン上でデジタル化する「RWA(Real World Asset:実世界資産)トークン化」が、世界の金融市場を大きく変えようとしています。2026年1月22日、サウジアラビア初となるRWAトークン化のセンター・オブ・エクセレンスが設立されたことは、この動きが単なる技術的な実験段階を超え、各国が本格的な制度整備に乗り出したことの象徴の1つです。
本記事では、サウジアラビアをはじめ、UAE、シンガポール、香港、EU、米国における最新のRWA規制動向を整理し、投資家やビジネスパーソンが押さえておくべきポイントを解説します。

サウジアラビア:Vision 2030を支えるRWA戦略

2026年1月22日、ブロックチェーンインフラ企業Open World Ltd.は、サウジアラビア初のRWAトークン化センター・オブ・エクセレンスを設立したと発表しました。

このセンターは、サウジアラビア資本市場庁(CMA)およびサウジ中央銀行(SAMA)の規制要件に完全準拠した形で運営される予定です。対象となる資産クラスは、エネルギーインフラ、不動産開発ファイナンス、炭素削減クレジット、ソブリン債など多岐にわたります。

設立の背景には、サウジアラビア政府が推進するVision 2030の金融セクター開発プログラムがあります。同国東部州はサウジアラムコ(Saudi Aramco)、ダーラン・テクノ・バレー(Dhahran Techno Valley)、KFUPM(キング・ファハド石油鉱物大学)などが集積する地域であり、世界最大級のエネルギー資産の集中地として、トークン化の実証実験に最適な環境を備えています。

ドバイ:不動産トークン化の世界的先駆者

ドバイは、RWAトークン化において最も積極的な動きを見せている地域の一つです。

2025年3月、ドバイ土地局(DLD)は「Real Estate Tokenisation Project」のパイロットフェーズを開始しました。これは、ドバイ仮想資産規制庁(VARA)およびドバイ未来財団(DFF)との協力のもと、不動産権利証書のトークン化を実施する中東初の取り組みです。DLDは、2033年までにトークン化不動産市場がドバイの不動産取引総額の7%にあたる600億AED(約160億ドル)に達すると予測しています。

2025年5月24日、トークン化インフラプラットフォームのCtrl Altは、DLDの公式トークン化パートナーとして選定されたことを発表しました。同プロジェクトでは、分散型レイヤー1ブロックチェーンであるXRP Ledger(XRPL)が採用され、オンチェーンとオフチェーンの登記システムが統合されています。投資家は「Prypco Mint」プラットフォームを通じて、最低2,000AED(約550ドル)から不動産への分割投資が可能となりました

2025年5月29日には、世界初となる「Property Token Ownership Certificate(不動産トークン所有権証明書)」が発行されました。初回プロジェクトには44カ国から224人の投資家が参加し、そのうち70%がドバイの不動産市場に初めて参入した新規投資家でした。現在、ウェイティングリストは6,000件を超えており、世界的な関心の高さがうかがえます。

シンガポール:グローバル標準の策定を主導

シンガポール金融管理局(MAS)は、2024年6月27日、資産トークン化の拡大に向けた新たな取り組みを発表しました。

MASは「Project Guardian」のもと、過去2年間で24の金融機関と連携し、資産トークン化のユースケースを検証してきました。参加機関には、J.P. Morgan、Citi、DBS、UBS、HSBCなどの大手金融機関が名を連ねています。

また2024年6月27日には、以下の3つのワークストリームが設立されました。

  • Fixed Income(債券):ICMAと連携し、トークン化債券のプロトコルとデータ仕様を策定
  • FX(外国為替):ISDAおよびGFXDと連携し、FXデータ仕様とリスク管理フレームワークを開発
  • Asset & Wealth Management:グローバルカストディアンと連携し、ファンドトークン化のデータモデルを構築

さらに同日、MASは「Global Layer One(GL1)」イニシアチブの第1フェーズを完了したことも発表しました。GL1は、複数種類のトークン化金融資産をホストできる共有台帳インフラの構築を目指すもので、BNY、Citi、J.P. Morgan、MUFG、Societe Generale-FORGEなどが参画しています。欧州中央銀行、フランス銀行、IMFのスタッフもオブザーバーとして参加しており、国際的な枠組み形成への布石となっています。

以降は、実証から商用化へ移行し、流動性・インフラ・標準・決済資産の「4要素」を整える方針を明確化。2024年11月には商用ネットワーク形成、相互運用型インフラ、業界フレームワーク、トークン化マネーへのアクセスを柱に支援を打ち出し、Guardian Wholesale Network(多目的かつ複数の管轄区域にまたがる金融ネットワーク)も推進。GL1は統制原則・仕様・コンプラ部品化で相互運用を強化しました。
2025年は10月にはBLOOM(Borderless, Liquid, Open, Online, Multi-currency)を開始し、トークン化預金や規制下ステーブルコインの活用を視野に入れ、11月には独連銀とMoUを締結して越境決済と国際連携を拡大しました。さらに決済面が前進し、11月にホールセールCBDCで銀行間翌日物取引のライブ実証成功を公表、MAS Billsのトークン化の展望も発表しました。標準策定と決済インフラ整備を並行し、国際標準の主導を狙う姿勢が鮮明です。

香港:リアルタイム決済インフラの構築

香港金融管理局(HKMA)は、2025年11月13日、「Project Ensemble」の新フェーズとなる「EnsembleTX」の開始を発表しました。

EnsembleTXは、2024年8月から実施されてきた「Ensemble Sandbox」の成果を踏まえ、トークン化預金とデジタル資産を用いた実取引の決済を可能にするパイロット環境です。当初は、トークン化マネーマーケットファンド取引における預金の活用と、リアルタイムでの流動性管理に焦点を当てています。

技術的には、銀行間のトークン化預金取引は、香港ドル即時グロス決済システム(RTGS)を通じて決済されます。将来的には、トークン化された中央銀行マネー(CeBM)による24時間365日の決済をサポートするようアップグレードされる予定です。

HKMAの余偉文(Eddie Yue)総裁は、EnsembleTXについて「概念実証(PoC)から実価値の取引へと移行する重要な節目」と位置づけています。香港証券先物委員会(SFC)との連携も継続し、多様な資産クラスにわたるトークン化技術の実用化を進める方針です。

EU:MiCA規制による包括的フレームワーク

欧州連合(EU)では、2023年6月に「Markets in Crypto-Assets Regulation(MiCA)」が施行されました。MiCAは、暗号資産に関するEU全域で統一された市場ルールを定めた画期的な規制です。

MiCAの主な特徴は以下の通りです。

  • 既存の金融サービス規制でカバーされていない暗号資産を対象
  • 資産参照トークン(ART)や電子マネートークン(EMT)を含むステーブルコインの発行・取引規制
  • 暗号資産サービスプロバイダー(CASP)の認可制度
  • 市場の透明性、情報開示、監督体制の整備

欧州証券市場監督機構(ESMA)は、EBA、ECB、欧州委員会と連携し、レベル2およびレベル3の技術基準を順次策定しています。2026年1月23日現在、ホワイトペーパーのフォーマット要件、オーダーブックの記録保持、移行期間に関するガイドラインなどが公表されています。

米国:GENIUS法によるステーブルコイン規制

2025年7月18日、トランプ大統領は「GENIUS Act(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)」に署名し、同法が成立しました。これは、米国初の連邦レベルでのステーブルコイン規制法です。

GENIUS法の主要なポイントは以下の通りです。

  • 準備金要件:ステーブルコイン発行者は、米ドルや短期米国債による100%の準備金裏付けを義務付け
  • 月次開示:準備金の構成に関する月次の公開情報開示を義務化
  • 消費者保護:発行者が破綻した場合、ステーブルコイン保有者の請求権を他の債権者より優先
  • AML/KYC:銀行秘密法(BSA)の適用により、マネーロンダリング対策と顧客確認を義務化
  • 制裁執行:財務省と連携した制裁リスト確認と、違法行為時のトークン凍結・焼却能力の確保

この法律は、ステーブルコインが米国債への需要を喚起することで、ドルの基軸通貨としての地位を強化する狙いもあります。トランプ政権は、2025年3月に戦略的ビットコイン準備金および米国デジタル資産備蓄の設立を定めた大統領令にも署名しており、デジタル資産分野での米国のリーダーシップ確立を加速させています。

今後の展望:相互運用性と標準化が鍵

各国・地域のRWA規制動向を俯瞰すると、いくつかの共通したトレンドが浮かび上がります。

サンドボックスからリアルバリューへの移行:シンガポール、香港、ドバイでは、実験的なサンドボックス環境を経て、実際の取引決済が可能なインフラ構築へと進んでいます。

官民連携の深化:MASのProject GuardianやHKMAのProject Ensembleでは、規制当局と民間金融機関が密接に連携し、業界標準の策定を進めています。

相互運用性への注目:シンガポールのGL1イニシアチブは、異なる法域間でトークン化資産を円滑に取引できる共有インフラの構築を目指しています。国際標準化団体(ICMA、ISDA、GFMAなど)の参画は、この方向性を強く示唆しています。

RWAトークン化は、不動産、債券、プライベートクレジット、エネルギー資産など幅広い資産クラスへのアクセスを民主化し、金融包摂を促進する可能性を秘めています。一方で、投資家保護、マネーロンダリング対策、技術的なセキュリティなど、克服すべき課題も残されています。

サウジアラビアの新拠点設立は、中東という新たな地域がこのグローバルな競争に本格参入したことを意味します。投資家やビジネスパーソンにとって、各国の規制動向を継続的にウォッチし、機会とリスクを見極めることがこれまで以上に重要になっています。


参考・出典

本記事は、以下の資料を基に作成しました。


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