【2025年最新】CBDCを巡る米・中・欧の思惑と日本の立ち位置は?世界動向完全ガイド

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デジタル通貨という言葉を聞いたことがあるでしょうか。2025年現在、世界98%のGDPを占める137カ国が「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」の研究・開発に取り組んでいます。これは単なる技術革新ではありません。各国の経済思想、地政学的戦略、そして国民の生活に直結する重要な変化なのです。
CBDC(Central Bank Digital Currency)とは、中央銀行が発行するデジタル形式の法定通貨です。現金と同じく中央銀行が価値を保証し、政府の信用力に裏付けられた公的なデジタルマネーとして機能します。
この記事では、CBDCをめぐる各国の最新動向と、それぞれの国がどのような思想や戦略に基づいて政策を進めているのかを詳しく解説します。

CBDCの基本:従来のデジタル通貨との決定的な違い

CBDCは既存のデジタル通貨とは根本的に異なる特徴を持っています。

既存のデジタル通貨との違い

  • ビットコイン:分散型、政府の管理なし、価格変動大
  • ステーブルコイン:民間企業発行、特定資産に価値連動
  • CBDC:中央銀行発行、法定通貨と同価値、政府保証

「CBDCは電子的な現金」と考えるとわかりやすいでしょう。現金と同じ価値を持ちながら、デジタルの利便性を兼ね備えた通貨なのです。

CBDCが求められる理由

現在、世界中でCBDCが注目される背景には、以下のような共通課題があります。

デジタル決済の急拡大:コロナ禍を機に、世界中でキャッシュレス決済が急速に拡大しました。今では慣れ親しんだ決済方法になっています。

金融包摂の推進:銀行口座を持たない人々にも安全で安価な決済手段を提供し、経済活動への参加機会を拡大する必要性が高まっています。

国際決済の効率化:従来の国際送金は手数料が高く、時間もかかります。CBDCを活用した新しい決済システムで、この課題の解決が期待されています。

各国のCBDC戦略:思想と利害が交錯する世界情勢

【アメリカ】「停止」という戦略的選択

2025年7月、世界で初めてCBDCの発行を明確に停止する主要国となりました。この決定は、単なる技術的判断ではなく、深い政治的・経済的思想に基づいています。

  • 個人の自由とプライバシー重視:政府による市民監視の強化を懸念
  • 民間主導の市場経済:ステーブルコインなど民間のイノベーションを支援
  • ドル覇権の維持:CBDCではなくドル建てステーブルコインで国際的地位を強化

CBDCは金融システムの安定性、個人のプライバシー、米国の主権を脅かすとして、代わりにGENIUS法でステーブルコインの規制枠組みを整備しました。

この戦略により、アメリカは政府が直接市民の取引を監視する仕組みを避けながら、民間主導でドルの国際的地位を維持・強化しようとしています。

【EU】戦略的自律性を掲げる「積極推進」

EUは対照的に、デジタルユーロの開発を積極的に推進しています。

  • 欧州の戦略的自律性確保:米国や中国に対する独立性維持。ECBはデジタルユーロをパイロットしており、ユーロの国際的役割を強化することを目指し、「グローバルユーロの瞬間」を推進しています。これは、CBDCを通じた通貨の国際化に向けた競争的な動きを示唆しています。
  • 統一された決済システム:EU域内の経済統合促進。デジタルユーロ決済をユーロ圏全体で調和させ、現代的でユーザーフレンドリーな体験を確保することを目的としたデジタルユーロスキームのルールブックの草案作成を進めています。
  • プライバシー保護との両立:監視とプライバシーのバランス追求。ECBは、デジタルユーロが最高水準の品質、セキュリティ、プライバシー、ユーザビリティを満たすことを約束しています。

現在、約70の市場参加者が革新プラットフォームを通じて技術実験を実施しており、条件付き決済などの新機能の実用化に向けた準備が着実に進んでいます。

【中国】「パイロット運用」で世界をリード

中国は2024年6月までに、デジタル人民元(e-CNY)の取引総額が7兆人民元(約9,860億ドル)に達しました。これは2023年6月に記録された1.8兆人民元(2,530億ドル)の約4倍であり、世界最大のCBDCパイロットプロジェクトであるとされています。

  • 金融監督の強化:マネーロンダリングや脱税の防止。CBDCの動機の一つとして金融包摂の強化とともに「規制監視の強化」が挙げられています。
  • 国際的な影響力拡大:ドル決済に依存しない新しい国際決済システムの構築。中国人民銀行(PBoC)は、多極通貨システム戦略の一環としてデジタル人民元を推進しています。ロシアのウクライナ侵攻とG7の制裁後、国境を越えたホールセールCBDCプロジェクトが倍増し、中国、タイ、UAE、香港、サウジアラビアの銀行を接続するProject mBridgeが最も著名なものとして挙げられます。これらのプロジェクトは「従来の制裁や地政学的リスクを回避する、より安全で効率的な金融システムへの世界的な移行」を実現したい現れだと見受けられます。

中国のデジタル人民元は17の省・地域で教育、医療、観光など様々な分野で実際に使用されており、世界で最も実用的なCBDCとなっています。

【日本】「準備して待機」の慎重なアプローチ

日本銀行は「現時点でCBDCを発行する計画はない」と明言しながらも、将来の環境変化に備えて着実な準備を進めています。

  • 現金文化の尊重:現金への高い信頼を維持しながらデジタル化対応。日本銀行は、現金流通高が対名目GDP比率で20%程度と高く、現時点では一般利用型CBDCを導入する切迫した必要性は低いという見方があることを認めています。
  • 民間との協調:中央銀行と民間部門の適切な役割分担。日本銀行は、CBDCの発行形態として、中央銀行と民間部門による二層構造を維持する「間接型」が基本であるとしています。これは、日本銀行が全体的な枠組みを管理し、銀行等の仲介機関が利用者とのインターフェース部分の改善に取り組むことで、決済システム全体の安定性・効率性が向上するためです。

日本銀行では、2021年から段階的な実証実験を実施しており、概念実証フェーズ1、2を経て、必要に応じてパイロット実験への移行を検討する予定です。

CBDCの実用化状況:数字で見る世界の現状

世界のCBDC開発状況

2025年7月現在の統計

  • 137カ国が研究・開発に参加(世界GDPの98%をカバー)
  • 3カ国(バハマ、ジャマイカ、ナイジェリアが完全実用化を達成
  • 49の国・地域がパイロット実験実施中(過去最多)
  • クロスボーダー決済プロジェクトが13件進行中

具体的な成果事例

中国(デジタル人民元)

  • 取引総額:7兆人民元(約9,860億ドル)
  • 対象地域:17省・地域
  • 利用分野:教育、医療、観光、小売など

ナイジェリア(eNaira)

  • 流通額:139.8億ナイラ
  • ウォレット登録者:約70万人
  • 総流通通貨に占める割合:0.36%

バハマ(サンドドル)

  • 流通額:238万ドル
  • 登録ウォレット:10万件以上
  • 加盟店:1,800店舗

CBDCがもたらす社会的影響:私たちの生活はどう変わるか

プラス面の影響

決済の利便性向上:24時間365日、瞬時に送金や決済が可能になります。海外送金の手数料削減や処理時間短縮も期待されています。

金融包摂の推進:銀行口座を持たない人々でも、スマートフォンがあれば安全な決済手段にアクセス可能になります。

経済政策の効率化:政府が経済刺激策を実施する際、国民に直接給付金を配布することが技術的に可能になります。

懸念される課題

プライバシーの問題:政府が全ての取引を把握できるようになることで、個人のプライバシーや経済活動の自由が制限される可能性があります。

金融システムへの影響:銀行預金からCBDCへの大幅な資金移動が起きれば、銀行の金融仲介機能に影響を与える可能性があります。

技術的リスク:サイバー攻撃やシステム障害が発生した場合、決済システム全体に深刻な影響を与える恐れがあります。

日本の未来戦略:CBDCとどう向き合うべきか

日本は現金に対する信頼が高く、急激な変化よりも慎重な検討が重要視されています。また、現金の需要がある限り、日本銀行は現金の供給を続ける責任があるとし、CBDCは現金を代替するものではなく、共存し補完するものと位置付けています。

しかし、国際的な動向を考慮すると、準備を怠ることはできません。2024年9月時点、世界のGDPの98%を占める134カ国がCBDCを積極的に検討しており、G20諸国すべてが関与し、そのうち19カ国が進んだ開発段階にあります。さらに、技術革新のスピードが速く、将来的にCBDCへの社会的ニーズが急激に高まる可能性があるため、国際動向と技術革新の視点から準備を進める必要があります。

つまり、現金文化を尊重しながら、社会のニーズに応じて段階的にCBDCの導入を検討し、
既存の決済事業者やフィンテック企業などの民間との協調を通してイノベーションを促進する必要があります。
そして、日本単独での判断ではなく、G7諸国やアジア地域との連携を重視した国際協調も考慮した戦略が求められます。

まとめ:CBDCが描く未来の金融システム

CBDCは単なる技術革新ではなく、各国の政治思想、経済戦略、社会制度が反映された重要な政策ツールです。アメリカの「停止」、EUの「積極推進」、中国の「パイロット運用」、日本の「準備して待機」という異なるアプローチは、それぞれの国の価値観と戦略を明確に示しています。今後数年間で、これらの異なるアプローチがどのような結果をもたらすかが明らかになるでしょう。
CBDCの世界的な展開は、金融システムの民主化と効率化をもたらす一方で、プライバシーや自由という価値との新たなバランスを求める課題も提起しています。各国の動向を注視しながら、日本にとって最適な道筋を見つけていくことが、今後の重要な課題となるでしょう。


参考・出典

本記事は、以下の資料を基に作成しました。


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