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AIはなぜ金融業界で急速に普及しているのか？
金融機関が生成AI導入を急ぐ最大の理由は、圧倒的な「業務効率化」にあります。
例えば、みずほフィナンシャルグループでは、これまで行員が多くの時間を費やしてきた法人向けの融資稟議書のドラフト作成にAIを活用し、1件あたり平均1～2時間程度を要する所要時間を約10分に短縮する（90%以上削減）ことを目指しています 。
また、三菱UFJフィナンシャル・グループ（MUFG）では、すでに200を超える生成AI活用ユースケースを発掘しており、データ分析や文書の整合性チェック、社員からの問い合わせ対応など、行内の幅広い業務でAIの活用が試みられています 。
これらの動きは、日本銀行が実施したアンケート調査（「金融機関における生成 AI の 利用状況とリスク管理 －アンケート調査結果から－）の結果とも一致します。調査では、生成AIを導入する金融機関のほぼ全てが「業務効率化／コスト削減」を目的として挙げており、AIが持つ文書作成やシステム開発の能力が、金融業務と非常に親和性が高いと認識されていることがわかります 。
AIを信頼していいのか？「ハルシネーション」と「ブラックボックス」という課題
AIの能力は目覚ましい一方で、私たちはその判断を鵜呑みにして良いのでしょうか。ここには、二つの大きな課題が存在します。
一つは「ハルシネーション（もっともらしい嘘）」のリスクです。生成AIは、事実に基づかない情報を、あたかも真実であるかのように生成してしまうことがあります 。金融という正確性が命の業界において、これは致命的な欠陥になりかねません。
もう一つは「ブラックボックス」問題です。AIがなぜその結論に至ったのか、人間には判断プロセスが理解できないことがあります。例えば、AIによる融資審査で否決された場合、その理由が説明できなければ、顧客は納得できず、金融機関は説明責任を果たせません 。
こうしたリスクに対し日本銀行は、AI利用に関する適切なガバナンス体制の構築を金融機関に求めています 。日本銀行のアンケート調査（金融機関における生成 AI の 利用状況とリスク管理 －アンケート調査結果から－）によると、約7割の金融機関では、入力した情報が外部に漏れないよう、自社専用のクラウド環境でAIを利用したり、入力データに制約を設けたりといった対策を講じています 。AIの出した答えをそのまま使うのではなく、最終的には人間が入念に確認するというプロセスが、現在の金融現場での現実的な運用となっています。
AI時代のキャリアはどうなる？求められる「AIを使いこなす」スキル
従来、稟議書の作成やデータの整理といった業務は、専門性を高めるための重要な訓練の場でした。しかし、まさにこれらの業務が、AIによって自動化されつつあります。
これは、金融業界の人材育成モデルが大きな転換点を迎えていることを意味します。三菱UFJ銀行は、AIを使いこなすためのユーザー教育（eラーニング、勉強会、アイデアソンなど）に取り組む方針を示しており、新人が学習する内容ややり方が生成AIによって変化していくことを示唆しています 。
これからの金融パーソンに求められるのは、AIにはできない、より高度なスキルです。例えば、
- 戦略的思考力： AIが分析したデータを基に、ビジネス全体の戦略を立案する能力。
- AIマネジメント能力： AIに的確な指示を出し、その回答の妥当性を評価し、リスクを管理する能力。
- 人間的なコミュニケーション能力： 顧客の「考え・思い」に寄り添い、複雑なニーズに応える対話力 。
まとめ
AIは仕事を「奪う」存在ではなく、人間を「拡張する」ための強力なパートナーです。定型業務をAIに任せることで生まれた時間を、より付加価値の高い業務に振り分ける。そのような働き方のシフトが、今後のキャリアを築く上で不可欠になるでしょう。AIの進化は、私たちに新たなスキルの習得を促す「挑戦状」でもあるのです。
参考・出典
本記事は、以下の資料を基に作成しました。
- 日本銀行(https://www.boj.or.jp/) ：金融機関における生成 AI の 利用状況とリスク管理 －アンケート調査結果から－（アクセス日：2025年07月28日）:
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb241021-1.pdf - 日本銀行(https://www.boj.or.jp/) ：MUFGにおけるデジタル技術を活用した金融サービスの高度化・効率化（アクセス日：2025年07月28日）:
https://www.boj.or.jp/finsys/c_aft/data/aft250213a2.pdf - 株式会社三菱 UFJ フィナンシャル・グループ(https://www.mufg.jp/) ：OpenAI社との生成AIを用いた金融業務の高度化・効率化の取り組み開始について（アクセス日：2025年07月28日）:
https://www.mufg.jp/dam/pressrelease/2024/pdf/news-20241015-001_ja.pdf - KPMG(https://kpmg.com/xx/en.html) ：「相棒」としての生成AI導入で変化する三菱UFJ銀行 広がる活用領域と可能性（アクセス日：2025年07月28日）:
https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/jp/pdf/2024/jp-financial-ai-mufg.pdf - みずほフィナンシャルグループ(https://www.mizuho-fg.co.jp/index.html) ：〈みずほ〉が見据える、10年後の金融。生成AIを活用して、業務効率化と新たなイノベーションの実現へ。（アクセス日：2025年07月28日）:
https://www.mizuho-fg.co.jp/dx/articles/2312-generative-ai/index.html
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