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AIサイバーセキュリティの新時代：攻守両面で進化するAI
OpenAIが警告する「ハイリスク」モデルの到来
OpenAIは2025年12月10日、AIモデルのサイバーセキュリティ能力が急速に向上していることを明らかにしました。同社によると、セキュリティ評価指標であるCTF（Capture The Flag）チャレンジのスコアは、2025年8月のGPT-5で27%だったものが、同年11月のGPT-5.1-Codex-Maxでは76%にまで上昇しています。
OpenAIは今後のモデルについて、自社の「Preparedness Framework」においてハイレベルのサイバーセキュリティ能力に達する可能性を想定し、対策を進めていると発表しました。これは、AIがゼロデイ攻撃の開発や高度な企業侵入を支援できるレベルを意味します。
同社はこの状況に対応するため、防御側を支援する複数の施策を展開しています。
- Aardvark：コードベース全体の脆弱性を検出し、パッチを提案するエージェント型セキュリティ研究者（プライベートベータ中）
- Frontier Risk Council：経験豊富なサイバー防衛専門家で構成される諮問グループを設立予定
- Trusted Access Program：防御目的のユーザーに対し、段階的なアクセス権限を提供する仕組みを導入予定
NTT DATAが展開するAI駆動型サイバー防衛センター
日本企業の動きも活発です。NTT DATAは2025年12月4日、インドの4拠点（ベンガルール、ハイデラバード、ノイダ、ムンバイ）で次世代AIサイバー防衛センターの運用を開始したと発表しました。さらに、2025年12月に英国バーミンガム、2026年1月に米国ダラスでの開設も予定しています。
これらの防衛センターの特徴は以下の通りです。
- Agentic AI for SecOps：自律型AIエージェントがアラートのトリアージ、分析、脅威ハンティングを実行
- 調査時間を最大60%短縮：人間のセキュリティアナリストがより高度な業務に集中可能に
- アラート数を90%削減：誤検知の大幅な削減により運用効率を向上
- 800名以上のセキュリティアナリストを配置し、24時間365日のグローバルカバレッジを実現
NTT DATA, Inc.のサイバーセキュリティ責任者Sheetal Mehta氏は、”今日の脅威環境では、グローバルな知見とローカルな専門性を組み合わせたインテリジェントで適応的な防御が求められる”と語っています。
オープンソースAIの新潮流：Agentic AI Foundationの誕生
主要AI企業が結集した歴史的な発表
Linux Foundationは2025年12月9日、AI業界の新たなマイルストーンとなる「Agentic AI Foundation（AAIF）」の設立を発表しました。この組織には、競合関係にあるAnthropicとOpenAIが共に参画し、以下のプロジェクトが寄贈されました。
プラチナメンバーには、Amazon Web Services、Anthropic、Block、Bloomberg、Cloudflare、Google、Microsoft、OpenAIが名を連ねています。
Linux Foundation Executive DirectorのJim Zemlin氏は、”AIは対話型システムから自律的に協調できるエージェントへと新たなフェーズに入りつつある。AAIFの設立により、これらのプロジェクトは透明性と安定性を備えたオープンガバナンスのもとで成長できる”と述べています。
ビジネスへの示唆
この動きは、エージェント型AIの相互運用性が業界標準として確立されつつあることを意味します。企業がAIエージェントを導入する際、ベンダーロックインを回避しながら、複数のプラットフォーム間でシームレスに連携できる環境が整いつつあります。
製造業AI活用の新展開：三菱電機の物理埋め込みAI
三菱電機は2025年12月10日、少量の学習データで設備劣化を高精度に推定できる「物理埋め込みAI」を開発したと発表しました。この技術は、同社のAIブランド「Maisart®」における「ニューロフィジカルAI」イニシアティブの成果です。
従来のAIによる設備劣化推定では、多様な運転パターンや設置環境を網羅する膨大なデータが必要でした。新技術では、装置の物理モデルの理論式をAIに事前学習させることで、この課題を解決しています。
技術的な特徴は以下の通りです。
- 物理モデルとAIの動的統合：従来は固定されていた物理モデルと計測データの重み付けを動的に調整可能に
- 少量データでの高精度推定：個体差や環境条件を反映した少量の計測データで劣化を正確に推定
- 保守コスト削減：重大な設備故障や部品交換の必要性を低減
この技術は、日本の製造業が直面する熟練技術者不足や予防保全ニーズの高まりに対応するものです。鎌倉の情報技術総合研究所と米国ケンブリッジのMitsubishi Electric Research Laboratories, Inc.が共同開発しました。
まとめ：今すべきこと
2025年12月の各種発表から見えてくるのは、AIの進化が「能力向上」と「責任ある活用」の両面で加速しているという事実です。
今後の注目ポイント
- サイバーセキュリティ体制の見直し：AIを活用した攻撃・防御の両面で変化が起きています。自社のセキュリティ体制がAI時代に対応できているか、点検が必要です。
- エージェント型AI標準への対応：AAIFの設立により、MCPやAGENTS.mdといった標準が普及する可能性が高まっています。AI導入を検討する際は、これらの標準への対応状況を確認しましょう。
- 製造現場でのAI活用：三菱電機の物理埋め込みAIに見られるように、少量データでの高精度推定技術が実用化されています。自社の保全・品質管理への適用可能性を検討する価値があります。
参考・出典
本記事は、以下の資料を基に作成しました。
- OpenAI（https://openai.com/）：Strengthening cyber resilience as AI capabilities advance(2025年12月10日)（アクセス日：2025年12月11日）
https://openai.com/index/strengthening-cyber-resilience/ - The Linux Foundation（https://www.linuxfoundation.org/）：Linux Foundation Announces the Formation of the Agentic AI Foundation (AAIF), Anchored by New Project Contributions Including Model Context Protocol (MCP), goose and AGENTS.md(2025年12月09日)（アクセス日：2025年12月11日）
https://www.linuxfoundation.org/press/linux-foundation-announces-the-formation-of-the-agentic-ai-foundation - 三菱電機米国株式会社（https://us.mitsubishielectric.com/）：Mitsubishi Electric Develops Physics-Embedded AI for Accurate Estimation of Equipment Degradation from Small Amounts of Training Data(2025年12月10日)（アクセス日：2025年12月11日）
https://us.mitsubishielectric.com/en/pr/global/2025/1210/ - NTTデータ株式会社（https://services.global.ntt/en-us/）：NTT DATA Announces Six New AI-Powered Cyber Defense Centers to Strengthen Cyber Resilience and Counter an Evolving Threat LandscapeI(2025年12月04日)（アクセス日：2025年12月11日）
https://services.global.ntt/en-us/newsroom/ntt-data-announces-six-new-ai-powered-cyber-defense-centers
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