【2025年9月】フィンテック5大ニュース:RBI規制|EU即時送金|9行MiCA準拠ステーブル|量子34%|Klarna上場

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2025年9月、世界のフィンテック業界では従来の金融の枠組みを変える動きが加速しています。規制強化、量子技術の実用化、決済インフラの進化、そして大型上場とステーブルコイン構想。これら5つのニュースは、今後数年間の業界動向を決定づける重要なシグナルです。

1. インド準備銀行が決済代行業者への包括規制を導入

インド準備銀行(RBI)は2025年9月15日、決済代行業者(Payment Aggregators)に対する包括的な規制指針「Payment Aggregators Directions, 2025」を発表しました。オンライン、オフライン、越境決済を単一のマスター・ディレクションで包括し、即時施行を明記した点が特徴です。

規制の核心ポイント

今回の規制で特に重要なのは、以下の4つの要件です。

  • フルKYCと継続的モニタリングの義務化
  • 最低資本金要件と分別管理の徹底
  • 加盟店オンボーディングの再設計と審査頻度の強化
  • 越境決済における為替・制裁スクリーニングの強化

実務への直接的影響

短期的には、KYC要件の強化により加盟店のオンボーディング摩擦が増え、コンバージョン率の低下が懸念されます。しかし中期的には、不正損失やチャージバックが低減し、顧客生涯価値(LTV)の改善につながる可能性があります。

インド市場に進出している、または進出を検討している企業は、KYC手順と継続審査の「型」を早期に確立することが競争優位につながります。

2. HSBCとIBMが量子アルゴリズム取引で34%の改善を実証

HSBCとIBMは2025年9月25日、量子コンピューティング技術を活用したアルゴリズム取引の実証実験で、成約確率予測を最大34%改善したと発表しました。これは研究室レベルではなく、実際の欧州社債データを用いた実証実験である点が画期的です。

実証実験の具体的成果

今回の実験では、RFQ(Request for Quote)の成約確率予測において、量子アルゴリズムと古典的手法のハイブリッドアプローチが、従来手法を大きく上回る結果を示しました。Quote-to-Fill率やスリッページといった実務的なKPIに直結する改善が確認されています。

実用化への現実的なロードマップ

金融機関が量子技術を導入する際のポイントは、以下の2つです。

  • 改善したいKPIを先に明確化する(在庫回転率、執行コストなど)
  • 量子技術が得意とする組合せ最適化問題を切り出してPoC(概念実証)を実施

量子コンピューティングの本格実用化にはまだかかるとされていますが、今回の実証は「夢」から「時間の問題」へと状況が変わってきたことを示しています。

3. EU即時決済規制の対応前倒しと名義照合の制度化

EUのInstant Payments Regulation(IPR)対応が、規制採択からわずか10ヶ月(2025年1月)で義務の一部が発効するというタイトなスケジュールで、前倒しで進んでいます。この規制は24時間365日の即時送金を義務化するだけでなく、VoP(Verification of Payee/受取人名義照合)による誤送金・詐欺抑止を制度化した点が重要です。

VoPがもたらす実務的メリット

VoPは送金時に受取人の口座名義を照合し、「一致」「近似」「不一致」の結果を表示する仕組みです。これにより以下の効果が期待されます。

  • 誤送金の大幅な削減
  • 振り込め詐欺などの不正取引の抑止
  • 顧客体験(UX)の向上と信頼性の確保

実装のポイント

決済サービス事業者は、以下の2点を実装の優先順位として検討すべきです。

  • 送金UIにVoPの照合結果を分かりやすく可視化し、利用者への注意喚起を強化
  • 手数料の透明化と、カード決済やオープンバンキングとの住み分けの再設計

この規制対応は、不正抑止とコンバージョン率維持を両立させる絶好の機会となります。

4. Klarnaがニューヨーク証券取引所に上場完了

スウェーデン発のBNPL(後払い決済)大手Klarnaが、2025年9月11日にニューヨーク証券取引所での新規株式公開を完了しました。ティッカーシンボルは「KLAR」です。

この上場は、BNPL業界が「新興」から「確立された」決済手段へと進化したことを象徴する出来事です。上場による資金調達を活用し、Klarnaは広告事業やAIアシスタント連動サービスなど、成長投資を加速する方針を示しています。Klarnaの上場成功は、国内外問わずBNPL事業者にとっても、市場拡大の追い風となる可能性があります。

なぜKlarnaに注目すべきなのか、株式公開をした当時記事を公開していますので、詳しくはこちらの記事をご確認ください。

5. 欧州9大銀行がユーロ建てステーブルコインを共同発行へ

ING、UniCredit、KBC、Danske Bank、SEB、CaixaBankなど9つの主要ヨーロッパ銀行が連合を組み、MiCAR(Markets in Crypto-Assets Regulation)準拠のユーロ建てステーブルコインを共同発行すると発表しました。2026年後半のローンチを目指しています。

伝統的銀行によるステーブルコイン発行の意義

これまでステーブルコインは主に暗号資産企業が発行してきましたが、今回は規制を遵守する大手銀行が主導する点が革新的です。このプロジェクトには以下の特徴があります。

  • オランダで新会社(ステーブルコイン・コンソーシアム)を設立し、オランダ中央銀行の監督下で運営
  • 24時間365日の即時決済とプログラム可能な支払い機能
  • 国境を越えた効率的な送金とデジタル資産決済への対応
  • サプライチェーン管理や証券決済の効率化

欧州の主権的デジタル決済の基盤候補

このステーブルコインは、EUの即時決済規制とも相互補完的な関係にあり、欧州における「主権的デジタル決済」の基盤となる可能性があります。DVP(Delivery versus Payment)清算などの応用も視野に入れており、金融インフラの次世代標準を目指しています。

まとめ:フィンテック業界の今後

2025年9月のニュースから見えてくる、実務担当者が取るべき次の一手は以下の通りです。

インド進出・越境EC企業:KYC手順、継続審査、分別管理の「型」を早期に確立し、規制対応をコストではなく信頼性向上の機会と捉える。

金融機関のマーケット部門:量子×古典のハイブリッドアプローチを、KPI起点でPoC→効果測定→段階導入のサイクルで推進する。

EU域内の決済サービス事業者・EC企業:VoP実装と料金設計を前倒しで進め、UI設計まで含めて不正抑止とコンバージョン率維持を両立させる。

これらの動きは、単なるニュースではなく、今後数年間のフィンテック業界の方向性を示す重要なシグナルです。自社の立ち位置を明確にし、迅速に対応することが競争優位につながるでしょう。


参考・出典

本記事は、以下の資料を基に作成しました。


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