【2025年12月後半】AI動向:大統領令vsNY州 RAISE Actで読む「AI規制」と「AIエージェント」最前線

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2025年12月後半も、人工知能(AI)業界では大きな変化が相次いで起きています。連邦政府と州政府の間で繰り広げられるAI規制をめぐる攻防、そしてAIエージェント技術の本格的な実用化――これらの動きは、AIが「実験段階」から「実務段階」へと移行していることを明確に示しています。
本記事では、2025年12月後半に起きた重要なAI関連ニュースを整理し、ビジネスや社会にどのような影響を与えるのかを解説します。

連邦政府 vs 州政府:AI規制をめぐる対立が激化

2025年12月、アメリカでは連邦政府と州政府の間でAI規制に関する大きな対立が表面化しました。

トランプ大統領の大統領令:州法への介入

2025年12月11日、トランプ大統領は「人工知能に関する国家政策フレームワークの確保」と題した大統領令に署名しました。この大統領令の主な目的は、州ごとに異なるAI規制が乱立することを防ぎ、AIイノベーションを促進する統一的な連邦基準を確立することにあります。

大統領令では、50州それぞれが独自の規制を設けることで生じる「パッチワーク」状態がスタートアップ企業のコンプライアンス負担を増大させていると指摘。さらに、コロラド州の「アルゴリズム差別禁止法」を例に挙げ、特定の州法がAIモデルに「偏向した結果」を強制する可能性があると批判しています。

この大統領令に基づき、司法省内に「AI訴訟タスクフォース」が設置され、連邦政策と矛盾する州法に対して法的措置を取る体制が整備されます。州が「厄介なAI法」を維持した場合、連邦からの補助金が制限される可能性も示唆されています。

ニューヨーク州の対抗策:RAISE Act成立

一方、ニューヨーク州は連邦政府の方針に真っ向から対抗する形で動きました。2025年12月19日、キャシー・ホークル知事は「RAISE Act(責任あるAI安全・教育法)」に署名し、全米で最も厳格なAI透明性法を成立させました。

この法律の主なポイントは以下の通りです。

  • 大規模AIモデル開発者に対し、安全性プロトコルの作成・公開を義務付け
  • バイオ兵器作成支援や自動犯罪活動などの重大リスクに対する安全対策を要求
  • 安全インシデント発生時、72時間以内に州への報告を義務化(カリフォルニア州の15日より厳格)
  • 違反時の罰金は初回100万ドル、再発時は300万ドル
  • 金融サービス局内に専門の監視オフィスを新設

法案提出者のアンドリュー・グナーデス州上院議員は、「ビッグテック企業は利益を安全より優先しようとしているが、我々は反対だ。この法律により、技術革新と安全性は両立できることを示す」と述べています。

Zoom AI Companion 3.0:AIエージェント時代の幕開け

2025年12月15日、ZoomはAI Companion 3.0を発表しました。これは単なるアップデートではなく、AIアシスタントが「エージェント」として自律的にタスクを実行する時代への転換点を示すものです。

主要な新機能

  • エージェント型検索機能:会議サマリー、トランスクリプト、メモだけでなく、Google DriveやMicrosoft OneDriveなどサードパーティアプリの情報も横断検索
  • パーソナルワークフロー(ベータ版):フォローアップタスクの自動実行。例えば、毎朝Team Chatスレッドを自動要約して送信
  • エージェント型ライティングモード:特定の会議やリソースに基づいてビジネス文書をドラフト・編集・洗練
  • 会話型ワークサーフェス:Webブラウザ(ai.zoom.us)からアクセス可能な新インターフェースで、会議の議論をアクション可能なインサイトに変換

注目すべきポイント

特筆すべきは、基本プランのユーザーでもAI Companion機能を試せるようになったこと、そしてスタンドアロン版(月額10ドル)が有料Zoom Workplaceライセンス不要で購入可能になったことです。
Zoomのプロダクト&エンジニアリング担当社長、ベルチャミー・サンカーリンガム氏は「これはZoomにとって転換点。会議会社からAIファーストのインテリジェントワークオーケストレーションの先駆者への変革を続けている」と述べています。

Google Cloudの視点:2025年AIの教訓

2025年12月18日、Google CloudのCTOオフィスは「AI grew up and got a job(AIは成長して就職した)」と題した年末レビューを公開しました。この記事は、2025年のAI発展を俯瞰する貴重な視点を提供しています。

AIエージェントの本質

Google Cloudの専門家は、「2025年はAIと『チャット』するのをやめて、実際の従業員のように扱い始めた年だった」と総括しています。LLM(大規模言語モデル)とエージェントの違いについて、「LLMは事実を知っている瓶の中の脳。エージェントはその脳に手と計画を与えたもの」と表現しています。

例えば、パーティー計画エージェントの場合、従来のチャットボットはグアカモーレのレシピを教えるだけですが、エージェントはカレンダーを確認して日程を決め、友人にメールで都合を聞き、食料品店APIを通じてアボカドを注文し、友人の好みに基づいてSpotifyプレイリストを作成します。「仕事について話す」のではなく「仕事をする」のです。

2025年の3つの重要な変化

  1. 信頼が最大のボトルネックに:AIを既存のワークフローに統合することが重要かつ困難である理由は、人間がAIを完全には信頼していないからです。この「信頼の欠如」に対処するために、AI機能を段階的に統合できる堅牢なプロセスが必要とされています。
  2. 評価がアーキテクチャの一部に:評価は受動的な指標から能動的なアーキテクチャコンポーネントへと進化しました。オートレーター(審判役のLLM)がエージェントの出力をリアルタイムで評価し、エラーを検出すると実行可能なフィードバックを提供することで、人間の介入なしにより良い結果に向けて軌道修正します。
  3. AIのKPIを理解する必要性:AI成功を決定する指標は、売上高やEBITDAと同様に注目に値しますが、ほとんどの経営者はまだそれらを理解していません。ビジネスリーダーは今、この測定フレームワークを採用する必要があります。

まとめ:2025年12月後半の出来事が示すAIの方向性

2025年12月後半のAI動向から、いくつかの重要な示唆が得られます。

規制の二極化が加速:連邦政府はイノベーション促進のために州規制を抑制しようとし、州政府は独自の安全基準を強化しています。企業はこの複雑な規制環境を慎重にナビゲートする必要があります。

エージェントAIの実用化が本格化:ZoomのAI Companion 3.0やGoogle Cloudの分析が示すように、AIは「対話する相手」から「仕事をする同僚」へと変化しています。企業はAIエージェントの導入と管理に関する戦略を今から準備すべきでしょう。

信頼構築のプロセスが鍵:AIを組織に統合する上で最大の障壁は技術ではなく信頼です。段階的な導入と継続的な評価によって、信頼を構築していくアプローチが求められています。

2026年も引き続き、AI技術はさらに進化を続けるでしょう。重要なのは、技術の進歩に振り回されるのではなく、自社のビジネスにとって何が本当に価値あるのかを見極め、適切に活用していくことです。


参考・出典

本記事は、以下の資料を基に作成しました。


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