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結局「ジーニアス法」って何？
まず、「ジーニアス法」の基本から説明しましょう。
ジーニアス法（GENIUS法）とは、正式名称を「Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act of 2025（2025年米国ステーブルコイン国家革新指導確立法）」といい、アメリカでデジタルドル（ステーブルコイン）の発行や管理の方法を定める法律です。
簡単に言うと、「デジタル版のドルを発行する会社が、きちんとした会社かどうかをチェックし、利用者を守って安全に利用するためのルール」を定めた法律です。
なぜ今「ジーニアス法」が話題なの？まずはここから理解しよう
まず、「ジーニアス法」含めステーブルコインのルール作りが世界的に注目される背景には、はっきりとした理由があります。きっかけは、過去に起きたある事件です。
昔あった「デジタルドル」の事件がきっかけ
まず、「ステーブルコイン」について簡単にご説明します。これは、いつでも1枚＝1ドルのような特定の通貨の価値になるよう設計された、いわば「デジタル版のドル」です。価値が大きく変動するビットコインなどと違い、価格が安定しているのが最大の魅力です。その利便性から、世界中で買い物や投資に広く利用されていました。
しかし2022年5月、ある有名なデジタルドル（テラUSD）の価値が、突然ほぼゼロになるという衝撃的な事件が発生します。この事件では、米ドルとの等価性を維持するはずだったステーブルコイン「TerraUSD（UST）」と、そのガバナンストークン「LUNA」が暴落し、暗号資産市場全体に大きな混乱をもたらしました。
USTはドルとのペッグを失い（5月14日の時点では取引所で0.13ドル＝約17円に暴落した）、関連する暗号資産のルナは先週の82ドル（約10,600円）から0.000132ドル（約0.017円）にまで急落したのだ。これらの暗号資産に対する約600億ドル（約7.7兆円）という膨大な額の投資が、一夜にして水の泡になったのである。
出典：WIRED.jp｜「暗号資産「テラ」の暴落が、不可避だったと言えるこれだけの理由」2022年5月
「価値が安定している」はずのデジタルドルの価値が事実上なくなり、世界中の多くの人々が資産を失いました。この事件は、デジタルマネーの世界における、明確なルールの不在を浮き彫りにしたのです。
この事件を受け、誰もが安心してデジタルドルを使えるよう公式ルールを整備する、という動きが活発化しました。
特に金融の中心であるアメリカの議会では、ステーブルコインの信頼性を確保するための、様々な法案の議論が進められています。
つまり、今話題になっている「ジーニアス法（GENIUS法）」は、ルール作りの一貫であり、過去の失敗から学び、未来の安全を築くために生まれようとしている重要な動きなのです。
このルール作りの「3つのポイント」をサクッと解説
では、このジーニアス法のような、アメリカの議会で行われているルール作りでは、具体的にどのようなルールを定めているのでしょうか。ここでは、特に把握しておくべき重要な3つのポイントに絞って解説します。
ポイント①：「デジタルドル」を発行する会社の“体力”をチェックするルール
一つ目は、デジタルドルを発行する会社が、十分な資本を持つなど、経営的に安定した“体力”があるかどうかを、銀行のように厳しく審査するルールです。多くの人々から大切な資産を預かるため、不測の事態にも揺らがないような、信頼できる会社のみに運営を許可する仕組みを目指しています。
ポイント②：ウソがないか、ちゃんと“お金の裏付け”があるかを確認するルール
二つ目は、発行しているデジタルドルの総額に対し、それと同額の「本物のドル」などの信頼できる資産が実際に準備されているか（これを“裏付け資産”と呼びます）、専門家が定期的に監査するルールです。これにより、利用者はそのデジタルドルに確かな価値の裏付けがあると確認でき、安心して取引できます。
ポイント③：万が一の時にお金が戻ってくる“お守り”のようなルール
三つ目の重要なポイントは、万が一デジタルドルを発行する会社が倒産した場合に、利用者の資産を保護する仕組み作りです。日本の銀行預金が「預金保険制度」によって保護されているように、デジタルドルの世界にも利用者保護の仕組みを導入しようという議論が含まれています。
この法律は2025年6月17日に、アメリカの上院で68対30という圧倒的な賛成多数で可決されました。
米上院は、ステーブルコインを規制する「GENIUS法（Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins of 2025）」を圧倒的な超党派の支持（賛成68・反対30）で可決した。暗号資産（仮想通貨）に関する主要法案が上院を通過したのは初めてのことであり、民主党の一部有力議員によって長年、進展が阻まれてきた暗号資産関連の立法プロセスにおける歴史的転換点となった。
出典：CoinDesk JAPAN｜「米上院、ステーブルコイン規制法「GENIUS Act」を可決──暗号資産業界にとって歴史的勝利【速報】」2025年6月
現在は、下院での審議を待っている状況です。下院でも可決されれば、最終的に大統領の署名を経て正式に法律となります。
私たちの生活はどう変わる？気になる影響をチェック
こうしたルールが整備されると、私たちの生活にどのような影響があるのでしょうか。間接的に暮らしを豊かにする、いくつかの影響が期待されます。
影響①：海外サイトでの買い物がもっと安全になるかも？
信頼性の高いデジタルドルが市場の主流となれば、これまで利用に不安を感じていた海外のネットショップでの決済なども、クレジットカードに近い感覚で、より安心して使えるようになる可能性があります。
影響②：あなたが持っている仮想通貨（特にステーブルコイン）の信頼度がアップ
資産の一部としてデジタルドル（ステーブルコイン）を保有している場合、その価値の信頼性向上が期待できます。しっかりとしたルールの下で運営されることで、過去の事件のように価値が突然失われるといったリスクは大幅に減少するでしょう。
影響③：新しい金融サービスが日本でも増えるきっかけに？
安全なデジタルドルの基盤が整うと、それを活用した新しいサービスが生まれやすくなります。例えば、より安価で迅速な国際送金や、ユニークな投資商品などが登場するかもしれません。アメリカで確立された安全なモデルは、日本のサービスにも良い影響を与え、私たちの選択肢を増やすことにつながるでしょう。
まとめ：デジタルなお金に「安心」をもたらす重要な一歩
ステーブルコインに関する新しいルール作りの動きは、何かを禁止したり、厳しく規制したりするためだけのものではありません。むしろ、過去の失敗から学び、デジタルなお金の未来を、より安全で誰もが安心して使えるものにするための「未来への設計図」なのです。
これらのルールがいつ、どのような形で正式に決まるかはまだ分かりませんが、こうした国際的な動きを理解しておくことは、今後のニュースの見方を変え、ご自身の資産とどう向き合うかを考える上で、大きなヒントになるはずです。
参考・出典
本記事は、以下の資料を基に作成しました。
- WIRED.jp（https://wired.jp/）: 暗号資産「テラ」の暴落が、不可避だったと言えるこれだけの理由（アクセス日：2025年07月16日）
https://wired.jp/article/terra-luna-collapse/ - CoinDesk JAPAN（https://www.coindeskjapan.com/）: 米上院、ステーブルコイン規制法「GENIUS Act」を可決──暗号資産業界にとって歴史的勝利【速報】（アクセス日：2025年07月16日）
https://www.coindeskjapan.com/298475/ - Cointelegraph（https://cointelegraph.com/）:Binance temporarily suspends LUNA, UST withdrawals citing network congestion（アクセス日：2025年07月16日）
https://cointelegraph.com/news/binance-suspends-luna-and-ust-withdrawals-citing-network-congestion
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